《第八輪》



溢れる気持ち
固く握った手のひら

いつでも
瞼を閉じれば愛しい追憶が
瞳を開ければ君の笑顔が

俺を『待っている』
と言ってくれた君が


愛おしいんだ








《花、時々キミ/第八輪》







 いつも俺が隊務を終える時間と、店の客が一旦減る時間帯。
 偶然にも一致していたから、それが俺達の“逢い引き”の時間だった。

 偶然から生まれた“逢い引き”だったけど、今日は特別。
 昨日の夕方、“純”が成長しているのをこの目で見たから。

 もしかしたら、今日は──

 淡い期待に、早く待ち合わせ時間になれと心が馳せる。けれど、隊務は隊務。気を緩めることも手を抜くことも許されない。何より、自分自身が許さない。

(本当に難儀な性だ)


 少しだけ、自嘲した。







「薫! これ、一番さんの卓!!」

「はぁい、只今!」


 目の回るような混みように、軽く目眩。お店が繁盛するのは喜ばしいことだけれど、このまま“お昼休憩”が無くなることだけは勘弁して欲しい。


「薫! 五番さんのご注文を!!」

「は、はぁい!」


 今日は絶対に行かなきゃいけないのだから。
 もしかしたら“その日”は今日かもしれないから。

 逸る気持ちを抑えて、緩む表情は営業の笑顔に変えて。今は、やるべきことに専念。現を抜かしてばかりはいられません。

(本当、難儀な性だな)


 少しだけ、自嘲した。




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