《第五.五輪》
思った事をすぐ口に出す
口が悪い、と仲間に言われる
言った後に
不思議と後悔は無いけれど
相手に上手く伝わらない事実は 少しだけ悲しい
せめて君に囁く親愛の言葉は
君に真っ直ぐ伝わればいいのだけれど
《花、時々キミ/第五.五輪》
大通りを抜けて、真っ直ぐ進む。少し町の外れに近付くと見えてくる可愛らしい店。目的地。
普段なら走り抜けてすぐに着いてしまう距離だけど、今日はその倍はかかってる。
俺一人じゃないからだ。
「いやぁ、久しぶりに来たなぁこの店も」
「そんな暢気なこと言ってるから歩くの滅茶苦茶遅いっすよ、山南さん」
「コラコラお前失礼だぞ平助!」
新八っつぁんの過激な突っ込み(つまりハリセン)を受けて、思わず店の暖簾に顔が埋もれる。危うく店の戸にぶつかりそうだったけれど、根性で踏みとどまる。
そんな事になったら二度と店の敷居を跨がせてもらえないからだ。──しわくちゃババ‥“店主”に。
「ただいま!」
いつもの通り、戸に手を当てて一気に引いた後 この言葉を掛ける。後ろの二人が少しギョッとしたのを感じたけれど、そんな事は気にしない。
迎えてくれる笑顔を知っているから。
「はい、いらっしゃいませ藤堂さん」
待ち望んだ極上の笑みに、懲りずに心臓が動きを速めた。顔の筋肉は言うこと聞かなくなって勝手に動き出すし、締まりがなくて困ってしまう。彼女の前ではいつもキリリと格好良くありたいのに。
──でもまぁ、“自然現象”だからしょうがない
「何お前、いつもそんな挨拶言って店入ってんの?」
「まぁね。此処、俺の第二の家だから」
「──あぁ‥そう」
新八っつぁんは少し呆れたような、でもどこか納得したような表情を浮かべて席に着いた。
+