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風が桜の花弁を巻き上げた。
静かに、それでも鮮やかに。
時を留めていた桜の木の花弁が、ゆっくりと散っていく。
まるで時を取り戻そうとしているように。
まるで私達を、応援しているように。
私と平助はゆっくりと顔を上げた。
“時”が来た。
「――‥私、そろそろ‥行かなくちゃ‥」
「ああ‥」
「きっと‥‥待ってる」
「そうだな‥」
肩に乗った桜の花弁を手で優しく掃い、平助はやっと小さく笑った。それにつられて 私も笑む。
「‥俺はもう‥大丈夫。大丈夫だから‥“あの小路”に行くよ」
「え‥っ」
“あそこ”に‥?――――
平助は、また笑んだ。とても優しい、とても力強い、笑み。
「春華に‥“勇気”、貰ったから。‥大丈夫。向き合ってくるよ。」
その底抜けに温かい笑顔に 安心させられた。
なんて‥、強いんだろう‥――――
「――‥うん。」
時代は巡り、空も 再び巡った。
“今”の私達は、新たな“自分”だから。
「進もう、平助。私も‥私の願う場所に‥行くから」
「あぁ」
過去に決別を。
私達は、狂い咲き 咲き誇る桜を背にして、各々の願う方向へと 踵を返した。
―――願う方向へと‥―――
「‥‥なぁ、春華」
ふと、凛と よく透る平助の声に呼び止められた。
ゆっくりと、私は振り返る。
見据えた先には、桜吹雪の中穏やかに微笑う 平助の姿。
『俺達‥“幸せ”、だよな』
また同じ、問い掛け。
でも、今なら答えられる。
真っ直ぐな答えを、伝えるよ。
「――‥‥うん。」
沢山の奇跡の中、今、生きている。
「幸せ、だよ‥――」
幸せ過ぎて、怖いぐらいに。
「――‥ああ、‥‥“幸せ”だ‥――」
満足したような笑顔を残して、平助は歩いて行った。
――私の願う場所は“あそこ”しかない。
目指すは“新撰組”。
『whereabouts』-END