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ジャリ‥ ジャリ‥ ザッ‥
視界が開けた。
同時に目に入ってきたのは、鮮やかに咲き誇る ――――桜。
涙が溢れた。
今は十月。桜の季節の筈が無い。
でも、おかしいとは思わない。だって、私は知っている。
そこに在る筈の人物も。
「―――狂い咲き‥だな」
そう。“君”だよ。
「‥‥‥平‥助‥っ」
彼も 泣いていた。
「やっぱり此処‥来ちゃったな」
「――うん」
「“お前”と初めて会った場所だよな」
「――うん」
その雅やかな桜は、“あの頃”と 寸分違わず咲き誇っていた。
また、涙が溢れた。
「‥何なんだろうな‥この気持ち‥」
「‥‥」
「懐かしい‥悲しい‥嬉しい‥切ない‥‥っ」
震える平助の声が、更に涙を誘って。
私は口元を覆った。
と、急に大きな力で引き寄せられた。顔を上げたら、平助の顔がすぐ傍にあった。
私の肩を抱く手が、小さく震えているのが分かる。
「‥‥ごめ‥っ。‥少し‥で良‥から‥。この‥ま‥で‥‥居さ‥て‥‥っ」
声にならない平助の叫びが聞こえたような気がした。
「――‥‥うん‥」
「‥ごめ‥‥っ」
「‥‥うん‥――」
私達は、“あの頃”と変わらなく咲き誇る桜の本で‥泣いた。
“あの頃”から失ったモノは、あまりにも多過ぎて。
それでもまた 得たモノだって多い事も知っていた。
ただ、無性に泣きたかった。
悲しくて、嬉しくて。
淋しくて、懐かしくて。
切なくて、愛おしい‥――――――
私達は“過去”を思い、“今”と“未来”をも思って‥‥泣いた。
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