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風が吹いた。
‥と、惹かれるように 風の吹く方向を見た。
「あ‥――」
舞い上がる桜の花弁の先から現れたのは、『君』だった。
『覚えているか』など、確かめるまでもない。
彼女の表情は、『驚き』だけで、それ以上でも それ以下でもない。
(――良かった‥――)
一筋の胸の痛みを受け入れて、安堵した。
転生したのだ。
『過去』は、無くていい。
この少しの寂しさだって、これからの幸せを考えれば 受け入れられる。
だって、“今”を生きているのだから。
“過去”は、一つの存在の証として大切に閉まって、新たな証を 刻んで行こう。
暫しの沈黙に堪えきれなくなったのか、『彼女』は 口を開いた。
「‥‥‥えっと、あの、私――」
自己紹介をしようとしているという事は、瞬時に分かった。
けれど、そこで自分が割り込むなんて 想定外だった。
「――春華さん」
寂しさが、少しだけ姿を現してしまったのだ。
『彼女』は、ひどく驚いたような顔をした。
‥無理もない。
私は、思わず笑ってしまった。
「でしょう?」
自分達は“今”を、生きるんだ。
そう自分に言い聞かせ、
「さっき、教室で覚えました」
そう 誤魔化した。
と、『彼女』は、何故か残念そうな表情をした。
「‥‥そう、ですか」
何故?
何故残念そうなのか。
嫌な期待と憶測が胸をよぎる。
が、それに気付かないフリをした。
彼女は、何か躊躇うように 口を開いた。
「私達、何処かでお会いしたことあります‥?」
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