「沖田さん、今日は表が良いお天気ですよ」



そう言って私を起こしたのは“彼女”ではない。

“彼女”である筈がない。



“彼女”は もう 居ないのだから。



何月過ぎようと、目が覚めると 枕が濡れている。





『無理に微笑わないで下さい』








「‥‥そう、言ってましたよね‥‥」


「え？」



突然私が言葉を発したのに驚いたのか、賄いの女性は動きを止めて 私の方を見た。



「何でもないです」



少しだけ、笑む。これは愛想笑い。





――大丈夫、
　　無理して笑ってはいない――




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