油小路
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雨が ぽつ ぽつ 頬を濡らし
視界が、揺らぐ。
次第に雨は激しくなりだし
平助の笑顔は 悲しい程に 浮いていた。
雨音の奥で 慌ただしい足音が聞こえてきた。
――敵ガ 来ル‥―――
俺は涙とも 雨とも見付かない、頬を伝うものを拭い、もう一度 平助の手を握った。
「俺‥‥生きる‥ヨ
後で必ず‥迎えに来る、からサ‥。‥少し待ってろ」
――約束スルヨ‥ 生キル、ト‥――
今は冷たい平助の手を そっと下ろし、俺は春華ちゃんの方へ向き直った。
「春華ちゃん、行こう。 屯所‥‥――?」
そこに 在った のは、薬差し のみ。
 ̄ ̄ ̄
「‥‥ぇ‥。‥‥春華‥‥ちゃん‥?」
彼女の姿は 何処にも無かった。
俺が彼女の最期を知ったのは、
雨があがった 夜明けのことだった。
『油小路』-終