油小路
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「‥‥ねぇ、新八っ‥つぁん‥?」
「‥‥何‥だヨ‥」
あのね、と言って 平助は一度瞳を閉じた。
眼ぇ閉じるな馬鹿‥。 開かなくなったらどうすんだよ‥。
「俺‥‥幸せ‥‥だったぁ‥」
「幸‥‥せ‥?」
「うん。
‥‥だってさ‥、眼を閉じると‥‥ 皆 居るんだ。
佐之が馬鹿やってて、新八っつぁんが笑ってる‥。
土方さんはこっそり俳句考えてんだぁ‥‥。
俺‥‥ きっと、幸せそうに‥ 笑ってる‥‥」
平助は、今この状態でも 自分自身が笑っている事を 知っているのだろうか。
「幸せ‥‥ だったぁ‥‥」
消え行くこの瞬間にも こいつが「幸せ」と言えるのは、
こいつがそれを 築いたからだ。
こいつがとても 優しかったからだ。
「‥‥でもね、‥新八っつぁん‥」
「‥‥?」
「一つだけ‥‥悔しいんだ‥」
「‥‥‥何‥が‥?」
今度は瞳を、開けた。
その瞳には、溢れんばかりの、涙。
「夜明け‥ ‥見たかった‥。
時代に流され‥たのが‥ ‥悔し‥。
こんな時代じゃ‥なきゃ‥ ずっと馬鹿やって‥られたのかな‥とか‥。
よぼよぼの、爺さんに‥なって‥
新八っ‥ぁん達と‥ 思い出話‥したかっ‥‥とか‥
こんな時代じゃ‥‥なかったら‥‥」
それは、この時代に生まれ、流された俺達の
涙。
「死ぬのは‥覚悟してた‥から、怖くな‥‥けど‥‥ただ‥‥ ‥悔し‥い」
「‥‥ もう‥‥喋んな‥‥っ」
悔しくて‥‥ もどかしくて‥‥
歯痒くて‥‥ 憤って‥‥
苦しくて‥‥ 悲しかった‥‥
「‥‥ねぇ‥俺‥‥、次 生まれるなら‥‥爺さんになれる‥‥時代が 良い‥‥な‥」
小さくて、ささやかで、
普通の夢の筈だったのに
叶う ことは なかった。
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