良い所、悪い所
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貴方の事
まだ何も知らない
ねぇ、どんな物が好き‥?
好きな花は?
好きな季節は?
どんな時に笑うの――‥?
貴方の事、
まだ何も知らない
だから知りたい
だから‥教えて―――――
《良い所、悪い所》
鳥の囀りが聴こえてきた。あれは多分、雲雀。それならもう 朝なんだ。
そう思って、私は重い瞼を上げた。まだ淡いけれど、ずっと暗闇に置かれていた瞳を怯ませるには充分な陽射し。 もう一度だけ強く瞳を閉じて、それから思い切って体全てを覚醒させた。
起き上がってみて目の前に拡がったのは、見慣れぬ室内。つい最近までは普通にあった筈の家具類・机や椅子等は何処にも見当たらず、高さの低い調度品が可愛らしく揃っているだけ。更に言えば、いつもはフカフカなベッドで寝ていたのに、今は布団。
これが、これから私の“日常”になる。
身仕度をしてから廊下に出ると、まだ隊士の大半は寝ているのか、静かだった。
私は一呼吸置いてから、長い髪を纏め上げて 昨日案内してもらった台所へと向かった。
――台所、昨日は凄い有様だったし‥
これからお世話になる礼も込めて、朝食ぐらい作ろうと思った。
日本食を振る舞うのは久し振りで、不安が無いと言ったら嘘になるけれど。
案の定、台所に人影は無かった。おまけに昨夜の宴会のせいもあって、更に汚い‥。
「‥片付けだけで日が暮れそう‥」
でも ぐだぐだ言っていても仕方が無いので、袖を紐で括り上げて、意を決して 掃除に取り掛かった。
「なぁススム。なんか良い匂いしねぇ?」
「あぁ‥まぁ、するわな」
「誰か作ってんのかな」
廊下を歩いていた鉄と烝は、腹の音を誘う匂いを嗅いだ。
「んーっ 飯ーーーー!!」
「は? ちょっ‥待てや!」
台所ヘ向かって猪突猛進していく鉄を、烝は仕方なく追った。
そういえば 一体何人分作れば良いのだろう、と思い始めつつ、着々と仕上げを進めていた頃、突然誰かが台所に走り込んできた。
「飯ーーーーっ!!」
「て、鉄!?」
目を爛々と輝かせた鉄は、私の顔を見て急ブレーキをかけた。
「あ、春華だったんだ」
「え、何が?」
「んーーっ 旨そうー!」
鉄がつまみ食いしようとした時、烝が目にも止まらぬ速さでその手を弾いた。
「何やってんのやワレ。」
「ススムのけちん坊!」
二人は仲が良いんだな、と解釈してみた。
「春華って料理上手いんだなー」
「えぇ?」
食べてないのに分かるの?と笑うと、鉄は自慢げに答えた。
「だってあゆ姉のと同じ匂いがす‥る‥」
口調が尻窄まりになって、消えた。鉄は口を手で覆って、烝の方を見ていた。
「‥‥なんやねん」
「や、ごめ‥」
烝は長い溜め息をつき、呆れたように言った。
「阿呆。ガキが気ぃ使わんでえぇわ」
「‥‥ガキって言うな」
烝はもう一度、今度は少し鼻で笑うように息を吐いた。
「もうえぇから さっさとみんなに飯伝え行き」
「はいはい分かりましたよーだ」
鉄は渋々台所を後にした。
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