終わらない夜
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体が震えた。
と、同時に、注意が疎かになっていた右側に、人の気配を感じた。
それまで遠巻きにしていた浪人達が、介入してきたのだ。
「まさか此処で女を斬れるなんてなぁ!」
男が振るう刀の軌道は、スローモーションになった世界で、はっきりと見えた。
――キィィィン‥
ぐぁっ、という 男の嫌な悲鳴が耳に届いた。
「――っ陸奥さん!!」
彼が、助けてくれたのだ。
「――‥PEACE MAKER、相内春華」
深く被った帽子のせいで、陸奥さんの表情は 見えない。
けれど、涙が彼の頬を伝って 静かに落ちた。
「‥調停者。‥――今は貴女を信じましょう」
“坂本先生と同じ 意志を持つ貴女を。”と言って、陸奥さんは私に向けていた背を返して、こちらを向いた。
「‥事態が収まったら、話をしましょう。春華さん。」
「はい‥!」
浪人達がじりじりと寄ってくるのを横目で見て、陸奥さんは再び剣を構えた。
「貴女は内に。
――‥我々の退路を確保する程度になら、この者共を斬っても 文句は言われますまい」
「陸奥さん‥‥」
「さぁ、内に‥!!」
そう言って陸奥さんは足に力を込め、踏み切った。
「鉄!!」
暫く放心状態だった鉄に駆け寄ると、私は近くに落ちていた刀を拾った。
「しっかりしなさい!刀を取って」
「あ‥あぁ。」
のろくさと鉄は私の手から刀を受け取った。
その手が、微かに震えている。
「‥市村鉄之助。」
陸奥さんの声がした。
「勘違いをするなよ。我々は『相内春華』という人物を信じたのであって、お前に対する疑念は少しも消えていない」
先程までとは違う声色。
でも、そこに 殺気は無かった。
「此処で死ぬ事は許さない。」
鉄の瞳に力が蘇った。
生に対する ひたむきな、想い‥――
「――ごめん‥春華。もう大丈夫。ありがとう」
「‥‥鉄」
初めて出会った時と変わらぬ瞳が、そこにはあった。
――もう、鉄は大丈夫だ。
「大丈夫」
それなら私は、次に進むよ。
「ねぇ‥鉄」
貴方も【PEACE MAKER】となるべき人だから。
「‥何があっても、何をしてでも‥ 生きて」
「――‥おう」
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