そして紅い月
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「そんな‥っ」
春華さんの血の気がみるみる引いていくのが、目に見えて分かった。
「春華」
春華さんが足元から崩れそうになった。
それを隣に居た山崎さんが支える。
「しっかり立ちぃ。春華」
「あ‥‥ごめ‥なさ‥」
少しだけ力を取り戻した春華さんは、ふらついた足取りで私の枕元まで歩み寄ってきた。
「‥ごめんなさい 春華さん‥」
「何で沖田さんが謝るんです。‥‥薬は飲まれましたか?」
嗚呼、告げなければ。
「春華、その事なんやけど‥」
貴女と離れる為の言葉を。
「‥効く、薬‥?」
「ああ。喀血の後少しでも症状を和らげる 薬」
「‥それが 届いているの?」
「屯所から離れた薬屋に、な」
薬を取りに行ってくれ。
そう言ったのだ。私達は。
「‥行ってくれるか」
答えは、分かっているのだ。
「‥勿論。行ってくるよ」
彼女の献身を利用した、最悪な方法。
それは分かっている、けれど‥。
彼女を此処で危険に晒すのと比べたら、後に恨まれる方が 断然良い。
「‥ごめんなさい、春華さん‥」
「大丈夫です。私は貴方の主治医ですから」
ね、と首を傾ける彼女が、愛おしくて、愛おしくて‥。
気付いたらまた 抱き締めていた。
「ありがとう‥‥。」
純白な貴女に、これから起こるであろう赤い惨劇は、見せられないから。
「‥行ってらっしゃい。春華さん」
“行ってらっしゃい”の意味を教えてくれたのは、貴女。
だから 私には“お帰りなさい”を言う 義務がある。
だから まだ死ねない。
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