それぞれの風
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夜。
盛大な歓迎会、基、大宴会が催された後、夜の巡回の人達以外は眠りこけてしまった。
お酒が飲めない私は、眠ることなく 一人大広間から抜け出ると、縁側に腰掛けた。
風鈴が ちりん と鳴った。今はもう冬なのに、この時期まで忘れ去られている風鈴が、それでも凛とした音色をたてた。
そして、それによって初めて、微かな風が吹いていることを知る。
「‥良い風」
“日本”の香りがした。
静寂に、すっ‥ という襖の開く音が響いて、私はそちらの方を見遣った。
「「あ」」
昼間の赤髪の少年だった。彼も私と同様、酒が飲めない仲間なのだろうか。
「えっと‥市村君、だっけ」
「あ、うん」
どうぞ、と言って私の座っている隣を示すと、市村君は素直に腰を下ろした。
「“鉄”で良いよ。呼ぶの」
「名前、鉄っていうの?」
「ううん。正しくは“鉄之助”。でも皆鉄って呼ぶし」
「鉄、ね。分かった」
市村鉄之助、か。なんか良い名前。
‥でも何だろう、やっぱり何かが引っかかる。何かを忘れてる気がする。
「どうかした?」
伺いながら顔を覗いてくる仕草が、とても可愛く見えてしまった。
「あ、ううん。何でもないよ」
「?そうか」
「うん。‥あ、そういえば 鉄って――」
何歳?と訊こうとした時、唐突に 鮮明に記憶が蘇った。
思い出した。
「鉄‥。市村‥鉄之助。iron boy‥」
「え?」
そうだ。iron boy。
「龍馬さんが言ってた、貴方が“市村鉄之助”‥!!」
「!!?」
+