そして紅い月
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春華さんが退室してから一寸経つと、何処からか薪の燃える匂いがした。
(「誰かが何か燃やしてるのかな」)
そう考えると、腹の虫が騒ぎ出す。
そっと襖を開けて 庭の方を覗いてみると、鉄クンや土方さん、近藤さんに、片手に湯呑みを持った春華さんが 焚き火を囲っていた。
「‥ちょっとぐらい‥」
春華さんや山崎さんが、私の体を考えてくれているのは ちゃんと分かっている。
けれど‥
「ハイハイッ! 私も食べま―――‥」
ガシッ
「沖田さん。」
「‥‥」
捕マッタ‥
「‥どちらに行かれるのです」
「イエ‥‥。」
流石は監察方。
というか、何処から出てきてるんですか、山崎さん。
「んと その 山崎サン特製の健康食が美味しくないんじゃないんですヨ?」
ゴホ、と出来るだけ小さく咳をする。
「ただ たまには‥、甘い物いっぱい食べたいな~なんて‥」
きっとこんな言い訳じゃ通してくれはしないんだろうな。
「でしたら 同じ物をお部屋にお持ちします。せめて微熱が下がるまでは冷たい空気を避けて下さい。のどにも良くありません。」
ほらね。やっぱり駄目か。
「んと―――‥ ええっとォ‥。食べたいのもそうなんですけど‥。何て言うのかなぁ ‥‥ホラ」
私の体を案じてくれているのは、痛いぐらいに分かっている。
けれど‥――
「“あそこ”に居られるうちは 出来るだけ長くあそこに居たいんですよ
‥‥ね?」
ご免なさい、山崎さん。
「隙有り!」
「あっ、沖田さん!! 走っては体に毒です!」
「大丈夫デー―ス!!」
もう 一時でも惜しいんですよ。
“それ”が永遠でないと、遥か未来ではないと分かっているから。
「何焼いてるんですかー?」
「え!? 沖田さん! 部屋にいて下さいって言ったのに!」
「えへへー」
そして誰より 貴女の傍に。‥少しでも長く。
「まだ咳出てんだろうが。内に入って大人しくしてろ総司」
「大丈夫ですよー」
「ダーメーでーす!」
部屋に戻りますよ!と言って、その細い腕に精一杯の力を込めて押してくる彼女が 本当に愛おしくて。思わず抱き寄せてしまった。
「おっ沖田さん!?」
「えへへー」
「み、皆見てますって!!」
鉄クンが真っ赤になっているのが見えた。
まだまだ若いなぁ。
クスリと笑うと、春華さんがもがき始めた。
「離して下さいー!」
あらあら、鉄クンよりも真っ赤ですね。
と、ふと視界の端に 山崎さんと誰かが話をしているのを見た。
―――斎藤さんが帰ってきた―――
その事が意味するものは‥―――。
そうか。それなら‥‥。
血の惨劇が幕を開ける。
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