解けぬ約束
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その晩、夢を見た。
一人の‥ 男とも女とも見付かない人が、大きな大きな‥螺子を捲いている。
何処かで見た事があるような‥気がした。
『‥‥あなた‥』
見た事が‥ある。
あれは、英国の教会だったか―――
『‥‥イエス‥様‥?』
いや、違う。
あれは、奈良の古い寺だったか―――
『阿弥陀如来‥‥様?』
どちらも、違う。
『っ‥ もし‥かして‥』
それが確信に変わったと同時に、“その方”は螺子を捲くのを止めた。
『神‥‥様‥っ』
“その方”は手を止めて、螺子を‥抜いた。
ガキッという音の後に、知らない内に出現していた歯車が、回り始めた。
『‥やだ‥っ、止めて‥!』
“その方”は、ただ私の方を向いて、ただ 静かに涙を流した。
その涙、歯車の意義。
第六感で 感じ取ってしまった。
『‥‥い‥や‥‥』
どうしようもない恐怖に駆られて、体中の神経が逆立つのを感じた。
『止め‥‥て‥』
――沖田さん‥
――沖田さん‥っ
「沖田さん‥‥―――っ!!」
夢から逃れたくて、目を開けた。
枕が濡れている。
あの人の名を呼ぶのと共に 天へと伸ばした手は、空を掴むのではなく。
優しい手を 捕らえていた。
「どうしました‥?」
「沖田‥さ…」
その酷く優しい声に、一層涙が溢れてきた。
「‥‥あは‥は‥。怖い夢 見ました。‥ごめんなさい‥」
「いえ、良いんですよ。‥大丈夫」
優しい手。優しい声。優しい瞳‥――
「貴女が寝付くまで、此処に居ますよ」
「‥ありがとう‥ございます」
泣かないと決めたこの瞳から、脆くも涙が溢れている。
貴方のこの手を 離したくない‥‥。のに‥‥。
歯車は動き出した。
約束を交わしましょう
この空に、自分自身に誓って
生きて、生きて、生きて
必ず確かに
来世で再び出逢いましょう
神など知らないから
この空に誓って
神にも解けぬ 約束をしましょう
《解けぬ約束》-終