解けぬ約束
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父の送ってくれた薬は、沖田さんには適合しなかった。
不安は見せられない。
何より誰より不安を感じているのは、沖田さん自身だから。
泣かない。
私が泣いて解決するなら、いくらでも泣く。けれど、そんな訳がない。そんな事をしている場合じゃない。
泣くのは今じゃない。その時は今じゃない。
「沖田さーん、特製栄養飲料ができましたよー」
まぁ、所謂『栄養あるもの片っ端から突っ込んでみました汁』ですけどね。
私はうざったい程に笑って、笑顔を見せてみせた。
「ソレ飲んだら逆に具合悪くなっちゃいそうですよー?」
「大丈夫ですよー。あ、なんならサイゾーで実験します?」
沖田さんは苦笑して、戴きます、とすぐに答えた。
どの季節よりも 冬の空が一番澄んでいて、綺麗なのだと聞いた事がある。
「空‥綺麗ですねー‥」
「そうですね」
雲が、緩やかに流れる。
流れ流れて 風に分かたれて。そうして再び、風によって引き合わされる。
「ねぇ、春華さん?」
「はい?」
沖田さんの静かな声が、酷く胸に響く。
「人って‥‥死んだら、何処に行くんだと思います‥?」
心臓を鷲掴みにされた思いだった。
「‥それ‥、本気で言ってるんですか?」
そんな話、嫌だ。
嫌。
「怒りますよ?」
「例えば、の話です」
沖田さんが目を見て話してくれない。
「‥‥」
こんな事は初めてだった。
「人は‥‥」
沖田さんがどんな答えを求めているのかは 分からないけれど。
「人は‥、星になるんだとか言いますけど‥」
「‥けど?」
「私は‥、それは違うと思います。‥というか、‥嫌です」
嫌?と沖田さんは聞き返して、やっとこちらを向いた。
「何故です?」
「だって‥」
星なんて、何億光年も離れている。
光ですら、すぐに届きはしない。
「‥そんなに高い、遠い所に居たら‥、見えないじゃないですか。此方からも、彼方からも」
大切な人を見守れないなんて。見付けて貰えないなんて。
「私、我が儘なので」
「ふふ、そんな事無いですよ」
いえ。本当に我が儘なんですよ、私は。
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