開花の時を告げる花
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少女の話によると、
彼女はオランダ人‥という事になっているイギリス人らしい。
オランダ人しか通商出来ない事になっている出島で貿易をする為に偽っていたらしいけれど、それはまあ ある意味今はどうでも良い話だ。
名前はMaria。
出島に両親と船で渡ってきた少女は、悪徳人身売買の日本人に誘拐されて、此処・京都まで連れ去られてきたのだという。
「...Long long way...」
命からがら逃げ出して路地に隠れていたのを、運悪く先程の男達に見付かり なぶられそうになったのだ。
「‥‥」
子供好きで、真っ先に駆け寄って抱き締めてあげそうな沖田さんが、今はそうしない。
『異人』
その壁が、あまりにも高すぎて。
「...相内...?」
「Yes?Maria.」
マリアは小さな手で私の着物の袖を掴んで言った。
「What am I coming to...?」
――私ハ 一体ドウナルノ‥?――
当然の不安だった。
「...Maria,don't worry.」
「‥‥」
「...I'll...」
これは 裏切りなのだろうか
「I'll... lead you to your parents.」
新撰組に対しての。
「今、何て言ったんです? 春華さん」
本当の事を言おうか言うまいか、一瞬迷った。
言わなければ せめて“裏切り者”と言われなくて済む。
けれど
「‥私が この子の親に会わせてあげる、と言ったんです」
「親‥に?」
「ええ」
貴方に嘘はつきたくない。
「どうやって‥です?」
ご免なさい
「どうやって‥出島なんかに‥?」
ご免なさい
「知り合いに‥」
私は
「出島に出入り出来る人が居ます」
幕府の敵となる人の居場所を知っています。
「‥出島を出入り出来る人って‥」
沖田さんの瞳が険しくなった。
「春華さ「ねぇ、沖田さん」」
わざと言葉を遮った。
「沖田さん」
どうか
「沖田さん」
どうか
「なん‥です?」
私は貴方を信じてる。
だから
「私を信じてくれますか」
沈黙が怖かった。
身が裂けるように、痛い。
沈黙を守る沖田さんの口が、拒絶の言葉を発するのを想像すると、言いようのない恐怖がこの身を支配する。
けれど
沖田さんは 只黙って私を抱き締めた。
「沖田‥さん?」
沖田さんは 手に込める力を強めて、耳元でぽつりぽつりと言葉を繋いだ。
『信じてます』
『だから』
『只、何事も無かったように』
『帰ってきて下さい』
『待ってますから』
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