開花の時を告げる花
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冬にさしかかり、久し振りに合間見えた陽気な日に、最近内に籠もりがちな沖田さんを町へと誘った。
「‥そうそう、やっとお給料貰えるようになったんですよ‥」
「あはは、脱・一文無しですね」
「もともと一文無しじゃないですってば!!」
『一文無し』。そんな会話をしていたのは、もう随分前の事だ。
でも、この帯の木鈴が あの祭りの事を鮮やかに甦らせてくれる。
カラン、コロン‥ と耳に馴染んだ音が響く。
「もうすっかり寒くなってきちゃいましたね」
「ええ」
そろそろ上着が欲しくなる頃だ。
「春華さん」
「はい?」
「こんな季節は‥やっぱり」
「‥‥」
「‥‥」
「「お汁粉」」
思わず笑いが零れる。
もう慣れたものだ。
こんな単純なことなら容易に分かり合える。
なんだかくすぐったい感覚。
「あはは、行きましょうか。すぐ近くに良いお店があるんですよ」
「それは是非とも食べてみないとですね」
冬への腹ごしらえといきますか。
甘い香りと、体を包む温もり。
怒涛の日本でも、日常はこんなにも穏やかだ。
人が居るからこそ、国は動く、生きていける。
人こそが“国”なんだ
『ナイスとぅーミーちゅーじゃき、ワンダフルガール』
「――!?‥‥‥っ‥‥――」
「?春華さん、どうしました? 突然立ち止まったりして」
声 が 聞こ え‥‥
「‥‥今‥」
坂 本 さ ん の‥
「嫌‥‥」
「え?」
「‥‥駄目‥」
どうしようもない、不安感。焦燥感。そして
喪失感。
「‥あ‥ぁ‥‥」
日本 が 揺れ る
「春華さん!!」
急に足元が無くなる感覚を覚えた。
‥いや、違う。脚が崩れたんだ。
「春華さん!!」
「‥‥あ‥」
やっと焦点が合った。
顔を上げると沖田さんの顔がすぐ近くにあった。
「‥私‥」
「急に膝から崩れたんですよ! 大丈夫ですか!?」
「‥‥私は‥大丈‥夫」
“私は”大丈夫
でも‥“彼”は?
分からない。
この喪失感の意味する事が。
いや、
分からない“フリ”をしたのかもしれない。
――嗚呼‥ 開 花が 遅 れる ‥‥―――
心の何処かで何かがそう叫んでいる。
「‥大丈夫‥ですか?」
「‥はい」
「本当に‥?」
嘘はつきたくない。沖田さんにだけは。
強がって笑わないで、と 言ったのは私なのに。
ごめんなさい、でも‥‥
「大丈夫、です」
今は精一杯の笑顔を、貴方に。
沖田さんはそれ以上何も言わず、只 悲しく微笑んで 私の額に唇を落とした。
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