初めての空
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「‥‥春華‥か?」
やっぱりそうだ!と、嬉しくなって思わず顔が綻んだ。
“此処”で出会えた新たな“懐かしい”存在。
「‥つまり、二人は知り合いだった‥ということでいいのかな」
「あ、はい。‥実際に会ったのは二、三度ですけど」
そうか、と言って 近藤さんは優しく笑った。
「それなら 春華の案内は君に頼んでも良いかな?山崎君」
「はい」
そう烝が返答すると、土方さんはすっと立ち上がった。
「これからお前の“家”になる場所だ。しっかり見ておけよ」
そう言って去っていく黒い長髪が、日によく映えた。
「‥で、此処が台所」
広い境内をぐるりと一周案内してもらって、最後に此処・台所へと辿り着いた。
「なんか広いねー‥」
「‥まぁ、この間 せっまい旧屯所から越してきたばっかりやから」
そう言いながら、烝が台所をじっと見つめているのが気になった。
「‥烝?」
「‥‥なんでもあらへん」
そう言って向けられた背中は、数年前のそれと変わらなく見えた。
憂いを帯びたその瞳は、いったい誰を映しているのだろう。
+
「浪人だ!!出合えーぃ!!」
急に外が騒がしくなった。
何事かと思って烝と外に出てみると、顔が赤くなり 酒気を帯びている様子の浪人が一人、悪戯に刀を振り回していた。
「壬生呂がなんだコラぁ! お前らのせいで外を気楽に歩けないんだよっ!」
酒が入って感情が高ぶったのか、浪人はそんな事を叫び続けている。
唯一この場に居合わせている門兵は、まだ新人隊士なのか、なかなか切り込めずにいた。
「‥ちっ‥」
烝が舌打ちをして、懐から針のような物を取り出した 調度その時だった。
――斬‥‥――
胡蝶が、舞った。
――カチャ‥
刀が鞘に納められた。
「峯討ちですから、大事ありません。 そこの門兵さん!この人奉行所にでも連れて行って下さい。只の酔っ払いです」
そう言って“その人”は私達の方を向いた。
綺麗な瞳と、目が合った。
「おや?可愛いお客さんがいる」
この日初めて見た空は、この時、一気に色付けられた。
これが 彼、沖田総司との出逢いだった。
『初めての空』-終