狂い咲き
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以前、診察の時に永倉さんが話してくれたことがある。
身体は至って健康。でも、どこか陰のある笑顔が気になって、最後に何か心に溜めている事はありませんか、と訊いた時。
『本当に馬鹿な奴が居るんだヨ。世の中にはね。』
『馬鹿素直で、馬鹿優しい‥‥。本当に、正真正銘の、馬鹿。』
そういえば、以前、池田屋事件の話を聞いた時の、「本人」の特徴に、酷似している。
『そいつが馬鹿でさ、額に‥―――』
額の縦一文字。
「‥っ もしかし‥て」
貴方は
貴方が
「‥‥藤堂‥さん?」
『藤堂さん』は、ゆっくりと笑った。
風が、咲く時を違えた桜を 優しく舞い上げた。
「後悔は‥してない、筈」
「‥‥」
「でも、でもさ‥ 気付いたら 足が『あそこ』に向かっちゃってるんだよ‥っ」
悲痛な叫びが聴こえる。
‥時代が、そうさせた。
「‥この前も、もうすぐ祭りだ とか思ってたら、もう門のすぐ前で‥――――」
そういう時に、私の事を見掛けたのだろうか。
どんな想いで、あの 温かい場所を たった独りで見ていたのだろうか‥――――
気付いたら、頬を一筋の涙が伝っていた。
「‥何で 泣いてるの? 春華ちゃん」
「‥‥っ 桜が‥綺麗だから」
そっか、と 藤堂さんは静かに笑った。
「じゃあ、俺も泣いちゃおうかな‥‥。桜が‥綺麗だから」
総司には悪いけど、と言って、藤堂さんは私を抱き締めた。
腕に込められる力が強くて、一層涙が溢れた。
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