狂い咲き
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時を知らずに咲き乱れ
時を忘れて鮮やかに散る
それは
酷く美しく
酷く悲しい 現の草子
時を亡くした迷い子よ
今はせめても
光を抱いて眠れ
《狂い咲き》
二丁目の薬屋はまあまあ良質で、その向かいの漢方薬屋は値段が安いだけ。
大通りの調剤の店は 流石品数が豊富で、その曲がり角の店は輸入品が多くて 私には最適。
大分この町にも詳しくなった。
「あ!春華、良い桂皮末が入ったんだけど、買ってく?」
店主とも仲良くなった。日本ではまだ女医というものが珍しいらしく、そのお陰でもある。
「はい!調度新しいの入れようと思ってたんです」
安くして下さいね、と私が言うと、店主は笑った。
「春華にはいつも負けるなぁ」
私は店主のこの朗らかな人柄が好きだ。
最近沖田さんの調子が良い。
薬が効いているのだと‥信じたい。父が向こうで送った薬剤が日本に着いていれば、そろそろ屯所にも届く筈。
私が治してみせるんだ。
不治の病なんて知るものか。
人は強いモノなのだから。
そんな事を考えていたら、周りの風景が見慣れぬ物となっていた。
(「げ、迷ったかも‥」)
毎日町に出られる訳ではないから、未だに踏み入れた事のない道もある。
取り敢えず私は直感に任せて歩いてみることにした。
いざという時は人に道を訊けばいい話だ。
ただ、なんとなく。
本当になんとなくだった。
自然と足を踏み入れた路地。その路地にある小さな漬け物屋の曲がり角に、細く続く道を見つけた。
「‥‥」
行かなくてはならない気がした。
そして
誰かが呼んでいる気がした。
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