招かざる来訪者
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次の瞬間に起こった出来事を、私は全て事が終わってから理解した。
目の前に居た筈のお花さんが視界から消えたかと思ったら、私の首に腕が回されていて。
そう気付く前に、私は既に沖田さんの腕の中に収まっていた。
「春華さんを人質に、とでも思いましたか? そんな事、許す訳がないでしょう」
「うぐっ‥」
お花さんの鳩尾にはもう既に沖田さんの一撃が入っていた。
「春華さんの前で血は見せられませんから、感謝する事ですね」
沖田さんの言葉を聞き終わる前に、お花さんは意識を失った。
「‥怪我、無いですか?春華さん」
「は‥い」
未だにショックが抜けない私は、放心状態のまま答えた。
「さっき春華さんが手をあげようとした時、花さんが手を懐に掛けそうだったので、思わず止めに入っちゃいました」
お花さんが‥密偵。
「内部から情報を盗もうとしたんでしょうね。幹部に取り付いたつもりだったんでしょうけど‥皆上手く扱ってました」
皆は知っていた。その事が少しショックだった。
「‥最初から言ってくれたら良かったのに‥」
「え?」
知ってたら、変な嫉妬とか 嫌な事も考えなくて済んだのに。
そんな私の様子に気付いたのか、沖田さんはいつもの笑顔で笑った。
「だって春華さん嘘つけないんですものー。すぐ顔に出ちゃいますし」
「むっ‥!」
あまりにも図星で何も言い返せない。
「それに、これはあまりにも危険だったので。‥でも、春華さんには‥嫌な思いさせちゃいましたね‥」
ごめんなさい、と言う沖田さんの表情が本当に申し訳無さそうで。
「‥‥、もう」
「え?」
やっぱり貴方には敵わない。
「大丈夫です。良いですよ、別に。私を想って下さっての事なんですから。むしろ私が感謝しないと」
そう、沖田さんは いつもちゃんと私の事を想ってくれている。
それだけで、とても とても嬉しいから。
「その代わり、明日、例の菓子屋さんに連れて行って下さい」
「え、そんな事で良いんですか?」
「はい!」
本当の事を言うと、沖田さんの傍に私を置いておいてくれる事、それだけでもう十分だけれど。
それを本人に告げるのは、もう少し後にしよう。
夏空はいつの間にか とうに秋の色へと変化していて、天高く、秋風が吹くようになっていた。
《招かざる来訪者》-終