招かざる来訪者
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「お早うございます、春華さん」
いつものように早く起きて診察室に向かおうとしていると、“お花さん”とばったり会った。
「ああ、お早うございます、お花さん」
屯所内に自分と女給以外の女性がいるのは 何だか不思議な感覚だ。
「よく眠れましたか?」
「ええ。‥あの‥それで」
「?」
「あの‥‥、着替えなんて‥貸して戴けたりしませんか‥?」
当然な事だった。身一つだったのだから、着替えがある訳がない。
「ごめんなさい!配慮が足りてなかったですね。勿論良いですよ」
良かった、と言ってお花さんは笑った。
それはとても綺麗な顔で。
私の部屋に着くと、私は衣装箪笥へと向かった。
「今出しますね」
好みが分からないので、取り敢えず全部見せてみようと思って引き出しを引いた。
(「あ‥‥」)
一番に目に入ったのは、朱色の着物。沖田さんが選んでくれたものだった。
「‥‥」
どうしてもこれだけは着せたくなくて、お花さんに気付かれないように そっと一番下に回して、他の着物を取り出したらすぐに引き出しを閉めた。
一瞬、自分が嫌な奴に思えて、罪悪感を感じた。
結局、私が二番目に気に入っていた着物を貸すことになった。
「あの、春華さん?」
「はい、何でしょう?」
「最後に、台所の場所‥教えて下さいませんか」
何故台所?と一瞬思ったけれど、すぐに昨日の事を思い出した。
お花さんは一応賄いをやる事になっていたのだ。
「ああ、そうでしたね。行きましょうか」
「はい」
台所に着き、中へと案内しようとした時だった。
「ちょーっと待ったぁ!」
小さい影と、大きな影。
「永倉さんに、佐之さん?」
「おう、おはよう!」
「‥‥佐之さん、珍しく早起きですね」
佐之さんは一瞬びくっと反応した。
「そ、そんな事ないだろうが。俺はいつも早起きだ!」
‥そこまでしてお花さんを見たかったのかな
まあ、そうするのも無理はないぐらい美人だけれど。
「永倉‥さんと‥佐之さん?」
「そうそう、花ちゃん。以後お見知り置きを」
硬派だと思ってたのに、永倉さんまで!?
「花ちゃん、賄いなんてやらなくていいヨ! そういう事は女給さん達に任せてさ」
「え? でも‥」
「良いから良いから、ね!」
この日から、隊士の人達による『最恵国待遇』ならぬ『最恵人待遇』が始まった。
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