招かざる来訪者
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どうする事も思い浮かばず、私は女性を取り敢えず屯所の中へ通す事にした。
「えっと‥、取り敢えず、局長に話を通しましょうか」
「‥はい」
こんな時に不謹慎だけれど、物憂げな表情が 一層彼女の美しさを際立たせていた。
(「本当に綺麗な人‥」)
その時近藤さんは隊務から外れていたから、すぐに目通りする事が出来た。
「‥‥で、それが彼女か」
「はい」
近藤さんはまじまじと彼女を見た。
「名前すら覚えてないなんて‥不憫だなぁ」
「どうしましょう、近藤局長」
「うーん‥、このまま追い出す訳にはいかんしなぁ。‥歳はどう思う?」
傍で黙って煙管を拭かしていた土方さんは、いかにも面倒臭そうに頭を掻いた。
「ったく、面倒を‥」
「しょうがないじゃないですか、屯所の前ですよ? 仮にも医者がみすみすと見逃せるものですか!」
「そうですよー!」
突然助太刀の声が入ってきた。誰の声か、なんて考えずとも分かる。
「沖田さん」
「此処に暫く置いてあげましょうよ、土方さん! 外は物騒ですし、ね。
こんな綺麗な顔して記憶無くておちおち歩いてたら 楼閣につれてかれちゃいますよ!」
沖田さんの口から出た『楼閣』という言葉が、どうも似合わなくて、少し笑いそうになったけど 場を考えて止めた。
「えっと‥‥土方‥様?」
ずっと不安そうな顔をしていた女性が、静かに口を開いた。
「あの‥、迷惑なのは重々承知しています‥‥でも、どうか‥せめて記憶が戻るまで、此処に置いて下さいませんか!?」
賄いでもなんでもします!! と、彼女は頭を下げた。
「土方さん」
「歳」
「‥‥」
沖田さんと近藤さんに見咎められて、土方さんは頭を掻いた。
「ったく‥、ウチにはお人好しが多すぎる」
こうして 記憶喪失の彼女は、暫く屯所で面倒を見る事となった。
名前が無いと色々と不便なので、取り敢えずは“お花さん”と呼ぶことになった。
+