強い、ということ
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「あ、烝だ」
「‥‥」
あの後、永倉さんの 身に余る程の賛美を浴びてから別れて、一人屯所内をふらふらしていると、屋根上に烝の姿を見つけた。
「何してるの?」
「お前もな」
「そっち気持ち良さそうだね。登っても良い?」
「‥勝手にしい」
「うわ‥! 空独り占めだ」
「‥‥」
「建物低いからなー‥日本は」
「‥お前‥」
「ん?」
空に魅入っていると、隣で暫く黙っていた烝が口を開いた。
「弓」
「え?」
「弓の腕、立つらしいな」
「情報早っ」
流石は、というか。
「でも、少しぐらい弓使えたって‥」
「‥‥」
「自分の身も守れない」
「‥行きたいんか」
「え?」
「現場」
本当に何でも分かってるんだな、烝は。
「行きたい‥けど」
「けど?」
「‥無理だよ」
「‥‥」
「烝みたいな“力”も無いし」
そう、分かってる。
だからこそ 辛い。
「‥‥お前は欲張りやな」
「へ?」
烝はスッと立ち上がって続けた。
「そないに大きな“力”持ってながら、他の“力”も望むんか」
「“力”なんてそんなもの‥」
持ってない、と言おうとしたら、遮られた。
「持ってるやろ、俺なんかより遥かに長けてる医療技術」
「医療‥」
「船乗って海越えて、異人の言葉覚えて‥西洋から技術盗んできたんやろ」
「‥‥」
烝の視線は、此処からは見えない地平線を追っていた。
ああ、あの先は
英国の‥世界の広がる‥方角
私は‥何の為に、
何の為に“強く”なったのか
分かっていた筈だった
自分の“力”の意味、自分の‥責任
「十分やろ」
「‥‥うん」
「欲張るなや」
「うん」
やっぱり私は‥馬鹿だ。
ちゃんと言おう、沖田さんにも。
そういえば、初めて喧嘩したかもしれない。
帰ってきたら、いち早く駆け付けよう。そう思った。
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