強い、ということ
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「あ、やっぱり春華ちゃんだ」
「永倉さん‥」
「鈴の音がしたから居るんだろうなーと思って」
相変わらず木鈴は私の帯上でカランコロンと鳴っている。
「‥沖田さんならもう出動しましたよ」
「いやいや、今日は俺お留守番だから 暇でサ」
春華ちゃんは何してるの?と訊かれて、私は俯いた。
「激しく反省中です‥」
「はぁ、成る程」
「本当に馬鹿です、私」
まあまあ、と永倉さんが宥めてくれるものだから、少しだけ泣けてきた。
「総司も『貴女が大切なんです』って素直に言やぁいいのにな」
それは言われたら言われたで顔から火噴くと思います。
「‥中途半端な力じゃ行く資格も無いのは分かってます」
「うーん‥そうだねー‥」
「竹刀すら握ったことないですもん。ただの足手まといです」
「まあ女の子はそんな機会あんまりないもんね」
人から習った事と言ったら、護身術程度だ。あとは‥
「出来るとしたら、アーチェリーぐらい」
「?何、それ?」
「えーっと‥、こう、弓矢みたいなやつです」
へぇー、と永倉さんはどこか感心している様子で手を組んだ。
「んじゃあ、やってみたら?」
「へ?」
「ちょっと腕前見せてみてよ」
袴に着替え、身の丈より高い弓を携えて、屯所内の弓道場に赴いた。
「じゃ、まぁ腕慣らしといきましょ」
「はい」
遥か先にある的を見つめ、私は精神を研ぎ澄ました。
――‥カラン‥
木鈴の音も、いい安定剤になる。
――‥パンッ‥
手に伝わる振動と痺れが、何とも言えず気持ち良い。
「‥‥あ」
「え‥‥」
矢は中心を一分ずれた所を射ていた。
「‥一分ずれちゃった‥」
「えぇーー!!?」
永倉さんが絶叫した。
「春華ちゃんって何者!!!?」
「? でも、真ん中から一分ずれちゃいましたよ?」
「一分なんて蟻んこ一匹分だろー!!? 十分凄すぎるって!!」
そうか、真ん中を射抜かなきゃ意味がないっていうのは、父の誇大プレッシャーか。
感謝すべきなのか、そうじゃないのか。
次の一手からは中心を射ることが出来た。
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