天国と地獄
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「近藤さん、突然の来訪ですのに‥傷み入ります」
「ややっ、全く構いませんぞ。大して振る舞うことは出来ませんが‥」
それで結構です。と父は笑った。
「それにしても、随分大きな組になりましたね。西本願寺ですか」
「いやぁ、池田屋の一件以来志願者が増えましてね」
定番な大人の会話が始まった。
私はこの場に居ても仕方がないと判断して、そろそろ診察室に行こうと席を立った、が。
「春華、待ちなさい。私はお前に話があって帰国したのだから」
「え?」
父は 近藤局長と二言三言交わして、それから立ち上がった。
「近藤さん、春華と少し外で話をしてきても良いですかね」
「えぇ、構いませんぞ」
どうぞどうぞ、という近藤局長の笑顔に押されて、私は父と外へ赴いた。
父の顔に、いつもの笑みは無い。
口数少なく 二人並んで歩き、調剤の店の前を通ると 父が足を止めて、店の方へと歩み寄った。
「‥‥」
無言で父は薬剤を手に取り、見つめた。
「‥‥‥まだまだ、だね」
「え?」
手に取っていた薬を置いて、父は私の方を向いた。
「まだまだ、開化しそうにないね」
「‥‥あ‥‥うん」
日本の激動も、まだまだ序の口なんだろうと 思う。これから、時代が‥変わる。
「春華、率直に言おう」
祖国が、危ない。
私は、そんな国・時代に生まれたんだ。
だから
「英国に帰るんだ」
此処で運命を共に‥―――
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