天国と地獄
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もう決めた事なんだ
ご免なさい
分かってる
でも引けない
もう逃げられない
逃げる気もない
ご免なさい
引くことは私自身が許さない
《天国と地獄》
夏は嫌い。
「何でです?」
「だって暑くて暑くて‥」
服の下に汗をかく、あの気持ち悪さが嫌い。
季節は今、真夏。蒼天の白い入道雲が嫌にくっきりしていて、憎らしい。
「暑さ調整出来ないんですもん。着物って」
やっぱり訂正。“日本の”夏は嫌い。
こういうときは洋服が恋しくなる。
「浴衣が一番涼しいのに‥、あれって日本の女の人は銭湯の帰りぐらいしか着ませんよね?」
「そうですね~、男はあまり気にしないですけど。女の人にとっては 布が薄すぎて抵抗があるんでしょうね」
どうやらやっぱり私の感覚は日本じゃ受け入れられないらしい。
暑いんだから何着たって良いじゃないか!!
よく我慢できるな‥日本の人は。
ちりん、と風鈴が鳴る。
「さて、そろそろ巡回に行かないと」
「もうそんな時間ですか」
太陽が真上に昇っている。
「此処の所調子が良いからって、無理しちゃ駄目ですからね?」
「はは、大丈夫ですよ」
そう言う沖田さんの瞳は強くて、少し安心する。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい、気を付けて」
沖田さんは浅葱色の羽織を着た後に一度私の方を振り向いて、所謂‥ ハグをした。
「お、沖田さん??」
この人はいつも予想外な行動に出る。
こっちの身にもなってくれないと、私の心臓がいつまでもつか分からない。
「いや、なんとなく 雰囲気です」
「‥‥あ、暑いから は、離して下さい‥」
苦しい言い訳をしつつ、顔が火を噴いていた。
「春華さん顔真っ赤ですよー」
「誰のせいですか!!」
本当にもう、この人は。
今日は烝が主診をやってくれているから、少しだけ暇がある。
「境内を散歩でもするかなー‥」
そんな事を思って、後ろを振り返った時だった。
「~‥~‥~」
ベートーベン作曲
交響曲第九番 喜びの歌
父が大好きな歌。
「おや‥」
穏やかな空気がこの身を包む。
「春華、五ヶ月振り‥かな? How are you?」
懐かしい懐かしい、笑顔があった。
「お‥お父さん‥!?」
まったく予想外の 来訪者だった。
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