生まれ出づる意味
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
瞼が熱を帯びて、鼻がつんとした。溢れ出す感情を必死に堪えて、口を一文字にきゅっと結んだ。
なんて可愛くもない表情だろう。
「貴女が何処に居ようとも、きっと私は貴女を見付けて 好きになってましたよ」
だから、もう、堪えられないってば。
「‥‥‥沖田さんの馬鹿‥‥」
「はい?」
「そ‥ そんな事言って、もしも私がずっと英国に行ったきりで帰ってこなかったら‥ 見付けられませんでしたよ‥っ」
最後の足掻き。決壊寸前の堤防。
でも、貴方はそんなモノ いとも簡単に壊してしまうんだ。
「いえいえ。この世に『もしも』なんて無いんですよ。あるのは結果としての『未来』だけ。
貴女は日本へ戻ることを決めた。 屯所に残った。 私と出逢ってくれた。そして、私が貴女を好きになった‥。
ほら、全てが『今』に通じてる。こうならなかった『今』なんて有り得ないんですよ。」
沖田さんは、私が欲しい言葉 全てをくれる。
嗚呼、神様
どの宗教にも殉じない私だけれど
もし、この世界を創造した神というものが存在するならば
どうか
優しくて、儚くて
美しくて、繊細で
気高くて、眩しい
この存在に 在らん限りの幸福と慈悲を
貴方が 好きです
貴方が‥ 好きです
そっと髪に何かが触れたかと思うと、それは沖田さんの手で、優しく撫でてくれた。
「貴女の世界に、私を必要としてくれますか?」
その優しい調べに、最早涙を止める術はなかった。
答えは もうずっと前から決まっている。
「‥は‥い‥」
貴方の隣で『未来』を見たい。
貴方の‥隣で
「はい‥ 沖田さん‥!」
ごー‥ん ごーん‥
十二時を告げる鐘が辺りに響き渡った。
ふと 視線が重なって、どちらからともなく小さく笑った。
「沖田さん」
全ての幸せが
「生まれてきて下さって‥ありがとうございます」
貴方に降り注がれますように
この世の全ての存在には
この世に生まれ出づる 意味が在る
それは この世界を生きていく内に 見失われがちな事だけど
とても大切で 案外身近な事
貴方が愛してくれた事で
私はどれ程
価値のあるものになっただろう
《生まれ出づる意味》-終