共に歩む道
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― ― ― ― ― ― ― ― ―
そうだ。
「‥っ‥」
確かに、悲しみを知り 苦しむのかもしれない。
でも。
私には、たとえ僅かでも‥弱くても‥、人よりも 誰かを救える手立てがあるじゃないか。
大切な人が出来た今なら、父の言葉の意味が解る。
今なら、烝の言葉の意味も解る。
『お前は‥、良くも悪くも‥ 医者、なんやな』
「春華さん」
優しい声が聞こえた。ひどく綺麗な‥声。
「沖田‥さ‥‥」
「‥知られちゃい ‥ましたね」
「私‥‥」
沖田さんは、目を伏せて 静かに笑った。今まで見たことのないぐらい、切ない笑み。
「春華さん‥、ごめん なさい‥」
「え‥?」
「貴女に 苦しみの種を植えつけてしまって‥‥」
「!!! そんな‥っ」
この人は離れて行ってしまう。
そう思った。
私は無我夢中で沖田さんの袖を掴み寄せ、言った。
「っ‥嫌‥です」
「え‥?」
「言ったじゃないですか‥! 沖田さんの悪い所は‥優しい所と、強い所だって!!」
そんなに優し過ぎないで
そんなに優しく微笑まないで‥―――
その方が、辛いのだから‥――――
「‥私は医者です。覚悟だってあります」
そう、私は自ら望んで 今この『道』に立っている。
私がこの『道』を選んだのは きっと‥
「私が治してみせます‥から‥っ ‥どうか‥どうか一人で抱え込まないで‥。‥一緒に‥」
貴方と共に、歩む為。
止まることを知らない涙を拭ったのは、ひどく優しい 指だった。
「‥強い人ですね‥貴女は‥」
「‥‥強くなんて‥ないです」
今だって、感情に任せて泣き散らしてる。
医者は冷静でなければ、と 教わったのに。
私は弱すぎる。
貴方は 強すぎる。
「‥‥じゃあ‥、そうですね、一緒に‥いきましょうか」
「お‥きたさ‥」
沖田さんは、額に 触れるだけの口付けをした。
全てを肯定した 証。
「共に‥ね」
この道の先には、何があるのだろう
そんな事は 誰にも分からないけれど
貴方と共に “今”を歩めば
きっとそれは
振り返っても怖くない
振り返っても胸を張れる
軌跡になると思うから
そしてそれは
それぞれが祈る明日への
それぞれが願う未来への
奇跡になると思うから
共に‥
『共に歩む道』-終