常春の華、現る
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私が
再びこの空の下に 戻って来たのは
きっと
貴方に逢いに行く為
私が
貴方の空に戻って来たのは
貴方と出逢う為
だったのでしょう
今、貴方の空へ 還ります
《常春の華、現る》
懐かしい空気、
懐かしい風。
懐かしい景色に、
懐かしい空。
全てが肌にぴたりと馴染んで、私は少し嬉しくて大きく息を吸い込んだ。 優しく迎え入れてくれた、祖国の空気で胸が一杯になった。
「帰って‥来たんだな‥」
思った事を口に出すと 更に喜びが増して、私は軽くなった足取りで“あそこ”へと向かった。
目指すは“新撰組”
――――――
「あの‥」
恐る恐る、月代頭の門兵に声を掛けてみた。
「‥何か?」
門兵は不機嫌そうに答えた。私の事をじろじろ見ながら。
と、ふと私は自分の服装がおかしいのだという事に気が付いた。何しろイギリスでは生粋の和服が売られていなかったから、やっと見つけたこの着物すら、何所か西洋風なんだろう。
門兵の視線が痛い‥。
「えっと‥」
でも、今更何を言ったってしょうがないし。今はそう開き直って、目的を果たさないと。
「‥あの、此方に“土方さん”とおっしゃる方、いらっしゃいますか?」
「‥‥副長のことか?」
やっぱり此処に居るんだ、と私は少しホッとして 顔の緊張が緩んでしまった。
門兵はそれを見落とさなかったのか、怪訝そうな顔をして私の方を見ている。
「‥副長に何か用か」
「お会いしたいのですけど」
門兵は更に怪訝そうにして、顔をしかめた。どうやら不信感が募ってしまったよう。
「‥生憎、副長は巡回に行っていらして 今は此処にいらっしゃらない。日と刻限を改めて‥」
そこまで門兵が言いかけたとき、突然門兵と私の間を走り抜けていく人影があった。私の目に残ったのは、赤の色。
「誰‥?」
走っていった先を見ると、赤髪の少年の後ろ姿。更にその先には 十人足らずの集団が、屯所に向かってやって来ているのが見えた。
浅葱色の、揃いの羽織り。
「副長!!茶淹れますか!?」
「要らねぇよ阿呆。お前が淹れると茶の無駄遣いになる」
「酷っ!!」
少年は余程ショックだったのか、少し大げさな反応を見せた。
門兵と私は少しの間呆気に取られていた。
すると門兵は我に帰って、赤髪の少年が“副長”と呼んだ人物を、同じように呼んだ。
「土方副長!」
「あ"?」
“副長”こと、土方さんは 不機嫌そうな眼を門兵へと向けた。
「お勤め御苦労様です! ‥で、副長に会いたいと言っている‥‥女性が見えてるんですけど‥」
「女?」
土方さんはゆっくりとこちらを向いた。私は思わず微笑ってしまった。‥いや、頬が緩んだと言った方が正しいかも。
「‥?」
気付いてくれていないような様子を見て、私は堪らなくなって土方さんの元へ駆け寄った。
ドンッ
「うわっ!? 何だ!?」
身長差のせいで土方さんの腰に抱き着く破目になってしまったけれど、そんな事は気にせずに、私は埋めていた顔を上げた。
「お久し振りです、土方さん」
「‥!‥あ‥、お前‥!」
土方さんは私を指差して、口をぱくぱくさせて 声を詰まらせている。
「っ、春華ーーーっ!!!!?」
その声は局長の耳にまで届いたという。
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