祖国のタカラ
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春には桜が咲き誇り
夏は凛と風鈴が鳴く
秋には紅葉が空気を染めて
冬は小雪が空から舞い散る
そしてまた春が来て
桜の姿に、香に魅せられる
私はそんな
日の元の国で生まれた
《祖国のタカラ》
烝の勧めがあって、暫く私は烝のお姉さんの着物を使わせてもらっていた。
その事について、私は烝に お礼以外の言葉を発し兼ねたままだった。
そんな日が続き、私も屯所に大分慣れてきた時、土方さんに呼び出された。
「お呼びですか」
「ああ」
土方さんは煙管を手に取り、それで 畳の上にでんと置かれた大きな箱を示した。その横には沖田さんが相変わらずの笑顔で座っていた。
「着物だ」
「はい?」
「だから、着物を揃えてやったと言ってる」
もう一度箱を見てみると、確かに『○○屋呉服店』と印が押されている。
「‥あの、こんなにですか?」
「ああ。」
但し、と言って土方さんは手にしていた煙管を口にくわえて、手慣れた風に煙草に火を付けた。
「かなり金が掛かったからな。当分お前の給与は無しだ」
「え゛」
「やーい春華さんの一文無し~」
「酷いですよ‥沖田さん‥」
あはは、と沖田さんは無邪気に笑った。
「‥でも、いつまでも人のを借りていたら悪いと思っていた所なんです」
それがましてや遺品だなんて‥。
「だからとても助かりました。ありがとうございます」
当分給与は無しだとしても、この着物の量からして、かなり考慮してくれているのだと思う。普通にこれだけ買えば、まず一年分の給与は間違い無く消えていただろう。
貰った着物を広げてみた。
とても趣味の良い、素敵な柄達が そこには並んでいた。
「‥凄く趣味良いですね。誰が選んだんですか?」
「あ゙? そんなの店主に選ばせたに決まってるだろ」
そう言って土方さんはそっぽを向いたから、少し不思議に思った。すると沖田さんが私の傍に寄ってきて、こう耳打ちした。
『これ、本当は殆ど土方さんが選んだんですよ』
今はもう何食わぬ顔で煙管を蒸かし、書類に目を通しにかかっている土方さんを見て、私は思わず くすりと笑ってしまった。
「‥おい総司。今何か春華に要らぬ事吹き込まなかったか」
「いいえー? ただ、一着だけ私が選んだのがあるんですって言っただけですよー。ねぇ春華さん」
「えぇそうです。‥ってどの着物ですか?」
これですコレ、と言って沖田さんは 私が最初に手に取った着物を指差した。
朱の布地に、可愛らしい色調の花が、川を流れているかのように咲いている。
「素敵‥‥」
えへへ、と照れたように笑って、沖田さんはその着物を撫でた。
「わざわざ見立てて下さったんですか?」
「えぇ、まあ。この間貴女と町を散策していた時に、貴女に似合いそうだなと目に留まって」
本当に視野が広い。
「じゃ、今日の夕はコレ着て下さいね」
「今日の‥夕方?」
「えぇ。あれ?言ってませんでしたっけ? 今日は‥――――」
バタバタッ
嵐がやって来た。と思った。
ガタッ
「「祭りだ(ョ)!!!!」」
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