僕の空、君の空
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春の日差しが心地良い。
そんな、朝ぼらけ。
「‥‥春華‥」
朝日が温かい、と言うのは 間違った表現だろうか。
「‥春華‥」
でも、本当にそうだから。
祖国の方向から昇る朝日は、特別想い入れが強い。
「春華!!!」
「うわっはい!!?」
びっくりした。
窓から空を見ていたら 凄く近くから名前を呼ばれたから。
「あ、ジョンおはよう」
「“おはよう”じゃないよまったく。さっきから何回も呼んでるのにさ!」
「ごめんごめん」
手を合わせて謝り通す。
と、ジョンは私の後ろに東向きの窓を見た。
「なに、また見てたの?東の空」
「え? あー‥うん」
東の空は、いつも優しい光で満ちている。
そして優しく、私を目覚めさせる。
「nostalgiaだねぇ」
「んー‥、どうかな」
「? 違うの?」
“郷愁”というよりこの感情は‥
「‥何かが待ってる気がするんだ」
「何か?」
「そう」
‥でも、“物”ではない気がするのだ。
そしてその事を考えると、心が‥躍る。
すると急に、ジョンの眉尻が下がった。
「‥‥帰らないでよ春華」
「え‥?」
「イングランドに‥残ってよ」
ジョンの真剣な眼差しに、一瞬どきりとした。
男の子って時々凄く大人びる。
「ほら、イングランドだって島国だし、似てるじゃん!? 日本より遥かに発展してるし、どんな国より強いしさ! それに――」
「‥ジョン‥」
一気にまくし立てるジョンの名を呼ぶと、彼は喋るのを止め 静かに俯いた。
顔にかかるブラウンの髪の合間から、唇を噛み締めているのが見える。
「――‥日本は‥‥危ないよ」
「‥ジョン‥」
「‥‥遠すぎるよ‥」
そう言って肩を落とすジョンを見て、改めて彼の優しさを知った。
異国の彼はこれからこの地で、どんな人間に――どんなドクターになるのだろう。
知りたい。見たい。
そして『世界』を眺めてみたい。
――‥けれど
「――‥‥ありがとう、ジョン」
ごめんね。
ありがとう。
でも‥、でもね‥‥
「それでも‥、私の国なの」
弱くて、小さくて、儚い国だけど。
私の祖国なんだ。
確かに、行けば どんな運命が待ち構えてるのかも分からない。
けれど、
私の帰るべきは彼処。
「それにね‥」
あの幼き春の日の、日溜まりの中
たった一目だけ出逢った
“あの人”に
「会いたいの」
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