君と空と黒猫と
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「っ!!!!!」
ゴスッという鈍い音がして、軌道が修正された刀は、地面に突き刺さった。
猫は今も こちらを見つめている。
〈 ‥カラン‥‥ コロ‥ン‥‥ 〉
「‥‥ ‥‥春華‥‥さ…ん‥?」
猫の首元に見えたのは、懐かしい モノ。
忘れる筈がない。
見間違える筈がない。
私の懐中にも、対となるモノが 在るのだから。
赤い紐の結ばれた、神聖な木鈴。
彼女と共に 灰になり、天へと昇った筈だ。
「‥‥春華‥ さん‥‥っ」
あぁ ほら。
貴女だと分かっただけで、笑みが零れる。
失意と絶望から数ヶ月。失ってきた 自然な笑みが。
そうだ、こうやって笑うのだった、と 思い出された。
「逢いに‥‥来てく‥‥‥れ‥――」
〈 ‥‥ ゴポ‥ッ‥‥ 〉
視界に 朱 が広がった。
――嗚呼‥
本当ニ “此処”マデ 来タンダ――
膝が崩れて、自分の手を 見る。
「‥‥ 長かった‥‥な‥」
自嘲気味に笑むと、猫は歩み寄ってきて、私の手に付いた血を 舐めた。
私は反射的に手を引っ込めた。
「なっ‥!? 病が移っちゃいますよ‥!!?」
猫は尚も、寄ってくる。
私の傍に優しく身を寄せ、血だまりの上に 静かに座った。
―― モシカシテ‥‥?――
「‥‥ ‥‥‥一緒‥ に‥‥?」
猫は少し首を傾けて、目を細めた。
微笑っている 気がした。
それは 『彼女』が笑う時の癖。
「‥‥ ‥ふふ‥‥」
死ぬ時は絶対に独りだと思っていた。
彼女を思いつつ、独りで逝くのだと。
でも‥‥
「‥‥独りじゃない‥」
貴女は、なんて強い人なのだろう。
なんという 愛を抱いているのだろう。
最後の最期まで 貴女は‥―――
「幸せです‥‥。私、幸せ ですよ‥春華さん‥――」
貴女に出逢えて、 貴女を愛せて
貴女に‥‥ 愛されて‥―――
嗚呼‥
「‥‥いきましょう‥ ‥ ‥春華‥さん‥――――」
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