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二人残され、暫くの沈黙の後、ススムの口が先に開かれた。
「意味‥分からんかったやろ」
「え?‥あ、うん」
「‥‥‥俺の姉の事、覚えてるか?」
「あの美人なお姉さん?」
「‥‥」
黙って烝は近くにあった樽の上に腰を掛けた。
「‥‥表向きは“此処”で賄いやってて‥。‥‥数年前に‥“裏”‥で‥―――」
烝はそれ以上言葉を繋げなかった。
――昨日の烝の目は、誰も居ない台所に“お姉さん”を見ていたんだ‥―――
私は沸かしておいたお湯を急須に注ぎ、小さな湯呑みに容れた。
「はい」
「‥?」
不思議そうな目で見上げてくる烝に微笑み掛けてみた。
私なんかの笑いじゃ何にもならないと分かってはいても、そうする他無かった。
少しだけでも、一時だけでも良いから、元気になって欲しい。
「温かいもの飲むと 落ち着くよ」
「‥‥」
烝は黙って湯呑みを見つめた。
私はその後その場を離れてしまったけれど、後日、洗い場を見てみたら、きちんと洗われた湯呑みが置かれていたから、きっと飲んでくれたんだとは思う。
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