Chris Redfield
Name Change
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温もりはまだ消えない|後編
ナマエに会うのは今夜で最後になるだろう。
任務は終わった。
明日の朝にはチームと合流してこの町を離れる。――つまり今夜彼女に会えなければ、さよならを告げることすらできないのだ。
一目だけでも会いたい。
その思いに背中を押されるように俺は足早に店へ向かった。幸い、今日も小さな灯りが窓にともっている。ほっと胸を撫で下ろし、久しぶりに扉を押した。
中に他の客の姿はなく、静かな空気が満ちていた。
「…!!」
ナマエは俺に気づいた瞬間、カウンターを飛び出してこちらに駆け寄ってきた。
「クリス!良かった……。もう来ないんじゃないかって……。でも、来てくれた」
ナマエは眉尻を下げながら、安堵に滲んだ笑顔を見せた。
胸がズキリと痛む。
俺は頷きながら深く息を吐いた。
「仕事が片付いた。だから………
今夜で最後なんだ」
「っ…最後……?」
「明日の朝には、この町を離れる」
言葉にした途端、現実が重くのしかかる。
ナマエは黙ったまま、悲しみを帯びた瞳で俺を見つめていた。
「…とびきり美味しいお酒を入れなくちゃね」
彼女は寂しそうに笑って、カウンターの向こうに戻っていった。
今日で最後。
氷を落とす音、グラスを傾ける仕草――その一つひとつが、やけに名残惜しく映る。
「もう二度と、この町に戻ることはないの?」
「ああ。きっと…無いだろうな」
「そう……寂しくなるわね」
それ以上、互いに言葉を選べなかった。
それでも最後の時間を壊したくなくて、笑い合いながら酒を酌み交わした。いつもと同じように夜は過ぎていく。だが、それにも終わりが迫っていることを互いに分かっていた。
ナマエは店のシャッターを下ろし、一息ついた。
「家まで送らせてくれ」
腕を差し出すと、ナマエは少し驚いたように目を瞬かせ、それから嬉しそうに俺の腕に手を添えた。
並んで歩けばアパートまでの距離はあまりに短いものだ。玄関前に着いたとき、彼女の手が名残惜しそうに離れた。
「さあ、…残念だがお別れだ」
「ありがとう。今まで……本当に楽しかった」
ナマエは泣きそうなのを必死に耐えているのが見てとれた。このまま別れることが一番正しい。だが正しさだけで割り切れるほど、人は強くない。
こちらを寂しげに見上げる瞳に抗えず、思わず彼女を抱き寄せる。
「クリス……」
小さく名前を呼ぶ声。
抵抗せずすっぽりと腕の中に収まる彼女がひどく愛おしく、触れるだけのキスをした。
「思い出が欲しいって言ったら……迷惑かしら」
その囁く声はか細くても、はっきりと俺に届いた。
俺もまた同じ気持ちだった。
彼女の部屋に足を踏み入れたとたん、互いの距離は一瞬でゼロになった。
深く口づけをし、ここにお互いが存在することを確かめるように抱き合った。
俺の手を引きベッドルームへと歩くナマエ。
脱いだ服を雑に放りながらそれに従う。
彼女の薄いブラウスを剥ぎ、2人でベッドへと傾れ込んだ。滑らかな肌に吸い付けば、ナマエは吐息を漏らし俺にしがみついてくる。
いつもは余裕のある彼女が乱れる姿は、俺をさらに欲情させた。
からだも心も一つになる。
どちらの汗かはもう分からない。愛しい想いが溢れるままに名前を呼び合い、互いを求め合った。触れ合う温度のすべてを記憶に焼き付けたかった。
***
窓の外が淡い光に染まる頃、俺は静かに服の袖を整えた。
ベッドの上に横たわるナマエは、まだ夢と現実の狭間にいるようだった。
その寝顔に手を伸ばしそっと髪を撫でる。
指に絡む柔らかさを確かめるように、ゆっくりと。
「……ありがとう、ナマエ」
彼女のまぶたが揺れる。
眠気を纏った目で俺を捉えて微笑んだ。
「行ってしまうのね」
彼女の瞳を見つめたまま、俺は身をかがめた。
そして額に静かに口づける。
ナマエは何も言わず、ただ彼女の頬にある俺の手に、自身の小さな手を重ねた。
柔らかな温もりを感じながら、俺は最後の言葉をかけた。
「幸せにな」
「あなたも」
互いにわかっていた。
もう二度と会うことはないと。
背中越しにドアを閉め、胸の奥の鈍い痛みを受け入れた。振り返ればきっと、俺はここから動けなくなってしまう。
だから振り返らない。
白む空に包まれた町は静かだった。
fin.
ナマエに会うのは今夜で最後になるだろう。
任務は終わった。
明日の朝にはチームと合流してこの町を離れる。――つまり今夜彼女に会えなければ、さよならを告げることすらできないのだ。
一目だけでも会いたい。
その思いに背中を押されるように俺は足早に店へ向かった。幸い、今日も小さな灯りが窓にともっている。ほっと胸を撫で下ろし、久しぶりに扉を押した。
中に他の客の姿はなく、静かな空気が満ちていた。
「…!!」
ナマエは俺に気づいた瞬間、カウンターを飛び出してこちらに駆け寄ってきた。
「クリス!良かった……。もう来ないんじゃないかって……。でも、来てくれた」
ナマエは眉尻を下げながら、安堵に滲んだ笑顔を見せた。
胸がズキリと痛む。
俺は頷きながら深く息を吐いた。
「仕事が片付いた。だから………
今夜で最後なんだ」
「っ…最後……?」
「明日の朝には、この町を離れる」
言葉にした途端、現実が重くのしかかる。
ナマエは黙ったまま、悲しみを帯びた瞳で俺を見つめていた。
「…とびきり美味しいお酒を入れなくちゃね」
彼女は寂しそうに笑って、カウンターの向こうに戻っていった。
今日で最後。
氷を落とす音、グラスを傾ける仕草――その一つひとつが、やけに名残惜しく映る。
「もう二度と、この町に戻ることはないの?」
「ああ。きっと…無いだろうな」
「そう……寂しくなるわね」
それ以上、互いに言葉を選べなかった。
それでも最後の時間を壊したくなくて、笑い合いながら酒を酌み交わした。いつもと同じように夜は過ぎていく。だが、それにも終わりが迫っていることを互いに分かっていた。
ナマエは店のシャッターを下ろし、一息ついた。
「家まで送らせてくれ」
腕を差し出すと、ナマエは少し驚いたように目を瞬かせ、それから嬉しそうに俺の腕に手を添えた。
並んで歩けばアパートまでの距離はあまりに短いものだ。玄関前に着いたとき、彼女の手が名残惜しそうに離れた。
「さあ、…残念だがお別れだ」
「ありがとう。今まで……本当に楽しかった」
ナマエは泣きそうなのを必死に耐えているのが見てとれた。このまま別れることが一番正しい。だが正しさだけで割り切れるほど、人は強くない。
こちらを寂しげに見上げる瞳に抗えず、思わず彼女を抱き寄せる。
「クリス……」
小さく名前を呼ぶ声。
抵抗せずすっぽりと腕の中に収まる彼女がひどく愛おしく、触れるだけのキスをした。
「思い出が欲しいって言ったら……迷惑かしら」
その囁く声はか細くても、はっきりと俺に届いた。
俺もまた同じ気持ちだった。
彼女の部屋に足を踏み入れたとたん、互いの距離は一瞬でゼロになった。
深く口づけをし、ここにお互いが存在することを確かめるように抱き合った。
俺の手を引きベッドルームへと歩くナマエ。
脱いだ服を雑に放りながらそれに従う。
彼女の薄いブラウスを剥ぎ、2人でベッドへと傾れ込んだ。滑らかな肌に吸い付けば、ナマエは吐息を漏らし俺にしがみついてくる。
いつもは余裕のある彼女が乱れる姿は、俺をさらに欲情させた。
からだも心も一つになる。
どちらの汗かはもう分からない。愛しい想いが溢れるままに名前を呼び合い、互いを求め合った。触れ合う温度のすべてを記憶に焼き付けたかった。
***
窓の外が淡い光に染まる頃、俺は静かに服の袖を整えた。
ベッドの上に横たわるナマエは、まだ夢と現実の狭間にいるようだった。
その寝顔に手を伸ばしそっと髪を撫でる。
指に絡む柔らかさを確かめるように、ゆっくりと。
「……ありがとう、ナマエ」
彼女のまぶたが揺れる。
眠気を纏った目で俺を捉えて微笑んだ。
「行ってしまうのね」
彼女の瞳を見つめたまま、俺は身をかがめた。
そして額に静かに口づける。
ナマエは何も言わず、ただ彼女の頬にある俺の手に、自身の小さな手を重ねた。
柔らかな温もりを感じながら、俺は最後の言葉をかけた。
「幸せにな」
「あなたも」
互いにわかっていた。
もう二度と会うことはないと。
背中越しにドアを閉め、胸の奥の鈍い痛みを受け入れた。振り返ればきっと、俺はここから動けなくなってしまう。
だから振り返らない。
白む空に包まれた町は静かだった。
fin.
