Chris Redfield
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これが序曲になるなんて
アメリカの某州で噂されるバイオテロ事件を調べるため、現地の警察官たちが応援要員として呼ばれ、我々BSAAと合流した。
この捜査によりブラックマーケットが芋蔓式に暴かれ、解体できるかもしれない。エージェントである私は自然と肩に力が入っていた
が、しかしだ。
諜報活動をするためここに来てもうすぐ2ヶ月ほど経つ私には、一つ悩みがあった。
最近、現地警察官のライアンから毎日これでもかというほどのアプローチを受けている。
「今夜空いてる?」
「映画に行かない?」
顔を合わせるたびに、飽きもせず誘ってくる。
恋愛に興味がないわけじゃない。けれど、仕事で関わる相手に惹かれることはない。
何度も「あなたに恋愛感情はない」とはっきり伝えているが、その効力は三日と持たないのである。
——任務中に悩むべきことは男のアプローチじゃないはずなのに。
苛立ちと疲労でいっぱいになった私は、宿舎に戻った夜、友人のクレアに電話をかけた。
「ちょっと聞いてよクレア!」
「…えーっと、何か荒れてそうね。どうしたの?」
事情を話すと、電話の向こうで彼女はケラケラと笑った。
「はぁ〜おっかしい!」
「ナニガ!?」
「ナマエが"そういう事"で悩んでるのが新鮮で」
「他人事だと思って…」
「他人事ですもの」
「任務に集中したいのに、次会ったら何を言われるんだろってそっちに気を取られちゃうの!もうこんなの精神攻撃だよ」
「たしかに仕事に支障が出るのは考えものよね……。…あ!良いアイデアがあるわ!」
クレアは声を弾ませながら続けた。
「兄さんに恋人のフリをしてもらうのはどう!?」
「兄さん?」
クレアのお兄さん。
クレアのお兄さん?
「………えっ、クリス!?」
「そう。兄さんなら誰が見ても“強敵”って感じだし、舐めてる相手には効くと思うのよ」
「まあ確かに……ていうか、やっぱり押せば私が折れると思って舐めてるよね。嫌な人じゃないんだけどさ」
「……そうやって相手を突き放しきれないところが、貴女の良いところでもあり悪いところでもあるわね」
クリスが恋人役。
クレアには機密保持のため言えないが、偶然にも来週からクリスたちがこちらに合流する予定である。だから「恋人のフリをして!」とお願いしようと思えばできるのだけれど。
合同捜査で、あのオリジナルイレブンのクリス・レッドフィールドに"私の恋人役"という仕事を並行させるって……何だそれ。
「で!どうするの?」クレアはどこか楽しそうだ。
「兄さんに連絡しましょうか?かくかくしかじかで、貴女と恋人同士のふりをして、ビデオ通話でもしてあげてって」
「いや要らない要らない!クリスにも迷惑がかかるし!」
「そう?残念。絶対面白いのに」
「何にも面白くないからッ」
「あはは!ごめんなさい。まあ話はいつでも聞くから、また連絡してよね」
「うん……ありがと」
クレアと話して元気が出た。
が、根本的なことは何も解決しておらず、明日からも憂鬱な日々は続くのだ。
とにかく今は休まなければ。考えることを放棄するように私は眠った。
***
ライアンからの相変わらずのお誘いを交わしながら、ついにクリスたちが到着する日となった。
「お疲れさま。時間ピッタリだね」
「ああ。状況はレポート通りか?」
「うん、変わりないよ」
軽い挨拶を交わしながら一行をミーティングルームへと案内する。先週クレアに「クリスを恋人役に」なんて言われたものだから、顔を見たらほんの少しだけ意識してしまい目を逸らした。
ミーティングを終え、私はクリスのチームと持ち場の確認をするため話をしようとしたその時——横からにゅっとライアンが現れた。
「ハァ………」
「そんな顔するなよハニー。君のお仲間が増えたね。頼りになりそうな皆さんだ」
誰がハニーだ、誰が。そう言いたいのをこらえて冷静に答える。
「みんなすごく優秀よ。あとハニーはやめて。そしてそこを退いて」
「いずれそう呼び合うようになるんだから一緒だろ?」
パチン、と飛んでくる型通りなウインク。
反論しようとした瞬間、肩をグッと抱きよせられた。
驚いて横を見るとそこにはクリス。
突然のことにフリーズしている私をよそに、クリスはライアンに手短に言った。
「ナマエが世話になってるな。そろそろいいか?」
低く落ち着いた声は、妙な迫力があった。
行こう、と私の肩を抱いたままその場を去るクリス。ライアンからの視線を背中で感じながら、クリスに小さな声で感謝を述べた。
「数日前にクレアから連絡があったんだ。警官にしつこく絡まれてるらしいな」
「え"っ」
「恋人のフリをしてやれと言われた」
クレアめ…。
「ごめんね、ホントに気にしないで。自分一人で対処できないのが悪いの。ライアンのことは無視するから」
「これで収まるなら甘えてもいいだろ。“恋人”なんだし」
困りながらクリスを見上げると、イタズラっぽい笑みが返される。
今まで見たことのないその表情に、不覚にもドキリとした。
それからクリスはライアンの前でだけ、私の恋人役を演じてくれた。私が一人にならないようになるべく近くに居てくれるし、彼のそばを通る時は私と他愛無い話をして、話しかけられる隙を作らない。クリスにガードされ続けたライアンは、次第に私に話しかける頻度が減っていった。
何よりありがたかったのは、ライアンの前以外では一切こちらに踏み込んでこないことだった。あくまで彼氏と彼女の"フリ"。色恋に興味のない私にとって、それが一番大切だった。
***
任務も山場を越え、BSAAは本格的な引き上げを許可された。
あれだけしつこかったライアンも、今では稀に目が合うとニコッと微笑んだり、ウインクをしてきたりするだけに留まっている。クリスが来てくれてから本当にストレスなく仕事ができた。
雑務をこなし、バタバタとデータ入力をしていると、私の横でテーブルに浅く腰掛けながら資料を見ていたクリスが呟いた。
「恋人役もお役御免だな」
「この数週間本当に助かったよ!ありがとう、変なことに巻き込んでごめんね」
「ライアンがさっきからチラチラおまえを見てる」
クリスは手元の書類から目を離さずに言った。
「そうなの?……色々あったけど、最後に一言挨拶でもしてこようかな。ライアンには一応お世話になったし」
「そういうところが、ナマエのいいところでもあり悪いところでもあるな…」
…あれ?同じようなことをちょっと前にクレアに言われた気がする。
さすが兄妹だ。
そう感心してクリスに目をやると彼もこちらを見ており、はたと目が合った。
「最後の仕事だ。見せつけておくか?」
「ん?見せつけるって何を……」
私が聞き終わるのが早いか、クリスは私の顎をそっと持ち上げたかと思うと、私にキスをした。
———フリをした。
私の背後、遠くの方にいるライアンの角度から見れば、きっと私とクリスはキスをしているように見えるだろう。
そうしていた時間はきっと3秒にも満たない短い時間だったが、私にはとても長く感じられた。
クリスは私の頭越しにライアンがこちらを見たことを確認したらしく、何事もなかったかのように私から離れていった。
「さあこれでもう完全に諦めるだろう。心置きなく挨拶してこい」
「……あ、ウン……データまとめたら……」
「——そうか?俺は先にこの辺のものを積んでくる。何かあれば呼んでくれ」
「ウン…ありがと…」
顔が熱くてまともに答えられない。
頭の中では何度も何度も、先程の一瞬が再生される。
ほんの少しタバコの匂いがしたな。
結構優しい手つきだったな。
……そして気づいてしまった。
クリスのことを考えるだけで、胸の奥がぎゅうっとする自分に。ああなんて単純なんだ私は。
でも、まだ。
これが恋心だと認めるのは……もう少し先送りにしよう。
***
「もしもし、兄さん?ナマエの件うまくいったんだってね、本人から連絡があったわ」
「別に特別なことはしていないがな。役に立てたなら何よりだ」
「それにしても大胆なことするのね!」
「何の話だ…?」
「え?無意識にああいうことする感じ?」
「………頼む。俺は何をしでかしたのか教えてくれ」
fin.
アメリカの某州で噂されるバイオテロ事件を調べるため、現地の警察官たちが応援要員として呼ばれ、我々BSAAと合流した。
この捜査によりブラックマーケットが芋蔓式に暴かれ、解体できるかもしれない。エージェントである私は自然と肩に力が入っていた
が、しかしだ。
諜報活動をするためここに来てもうすぐ2ヶ月ほど経つ私には、一つ悩みがあった。
最近、現地警察官のライアンから毎日これでもかというほどのアプローチを受けている。
「今夜空いてる?」
「映画に行かない?」
顔を合わせるたびに、飽きもせず誘ってくる。
恋愛に興味がないわけじゃない。けれど、仕事で関わる相手に惹かれることはない。
何度も「あなたに恋愛感情はない」とはっきり伝えているが、その効力は三日と持たないのである。
——任務中に悩むべきことは男のアプローチじゃないはずなのに。
苛立ちと疲労でいっぱいになった私は、宿舎に戻った夜、友人のクレアに電話をかけた。
「ちょっと聞いてよクレア!」
「…えーっと、何か荒れてそうね。どうしたの?」
事情を話すと、電話の向こうで彼女はケラケラと笑った。
「はぁ〜おっかしい!」
「ナニガ!?」
「ナマエが"そういう事"で悩んでるのが新鮮で」
「他人事だと思って…」
「他人事ですもの」
「任務に集中したいのに、次会ったら何を言われるんだろってそっちに気を取られちゃうの!もうこんなの精神攻撃だよ」
「たしかに仕事に支障が出るのは考えものよね……。…あ!良いアイデアがあるわ!」
クレアは声を弾ませながら続けた。
「兄さんに恋人のフリをしてもらうのはどう!?」
「兄さん?」
クレアのお兄さん。
クレアのお兄さん?
「………えっ、クリス!?」
「そう。兄さんなら誰が見ても“強敵”って感じだし、舐めてる相手には効くと思うのよ」
「まあ確かに……ていうか、やっぱり押せば私が折れると思って舐めてるよね。嫌な人じゃないんだけどさ」
「……そうやって相手を突き放しきれないところが、貴女の良いところでもあり悪いところでもあるわね」
クリスが恋人役。
クレアには機密保持のため言えないが、偶然にも来週からクリスたちがこちらに合流する予定である。だから「恋人のフリをして!」とお願いしようと思えばできるのだけれど。
合同捜査で、あのオリジナルイレブンのクリス・レッドフィールドに"私の恋人役"という仕事を並行させるって……何だそれ。
「で!どうするの?」クレアはどこか楽しそうだ。
「兄さんに連絡しましょうか?かくかくしかじかで、貴女と恋人同士のふりをして、ビデオ通話でもしてあげてって」
「いや要らない要らない!クリスにも迷惑がかかるし!」
「そう?残念。絶対面白いのに」
「何にも面白くないからッ」
「あはは!ごめんなさい。まあ話はいつでも聞くから、また連絡してよね」
「うん……ありがと」
クレアと話して元気が出た。
が、根本的なことは何も解決しておらず、明日からも憂鬱な日々は続くのだ。
とにかく今は休まなければ。考えることを放棄するように私は眠った。
***
ライアンからの相変わらずのお誘いを交わしながら、ついにクリスたちが到着する日となった。
「お疲れさま。時間ピッタリだね」
「ああ。状況はレポート通りか?」
「うん、変わりないよ」
軽い挨拶を交わしながら一行をミーティングルームへと案内する。先週クレアに「クリスを恋人役に」なんて言われたものだから、顔を見たらほんの少しだけ意識してしまい目を逸らした。
ミーティングを終え、私はクリスのチームと持ち場の確認をするため話をしようとしたその時——横からにゅっとライアンが現れた。
「ハァ………」
「そんな顔するなよハニー。君のお仲間が増えたね。頼りになりそうな皆さんだ」
誰がハニーだ、誰が。そう言いたいのをこらえて冷静に答える。
「みんなすごく優秀よ。あとハニーはやめて。そしてそこを退いて」
「いずれそう呼び合うようになるんだから一緒だろ?」
パチン、と飛んでくる型通りなウインク。
反論しようとした瞬間、肩をグッと抱きよせられた。
驚いて横を見るとそこにはクリス。
突然のことにフリーズしている私をよそに、クリスはライアンに手短に言った。
「ナマエが世話になってるな。そろそろいいか?」
低く落ち着いた声は、妙な迫力があった。
行こう、と私の肩を抱いたままその場を去るクリス。ライアンからの視線を背中で感じながら、クリスに小さな声で感謝を述べた。
「数日前にクレアから連絡があったんだ。警官にしつこく絡まれてるらしいな」
「え"っ」
「恋人のフリをしてやれと言われた」
クレアめ…。
「ごめんね、ホントに気にしないで。自分一人で対処できないのが悪いの。ライアンのことは無視するから」
「これで収まるなら甘えてもいいだろ。“恋人”なんだし」
困りながらクリスを見上げると、イタズラっぽい笑みが返される。
今まで見たことのないその表情に、不覚にもドキリとした。
それからクリスはライアンの前でだけ、私の恋人役を演じてくれた。私が一人にならないようになるべく近くに居てくれるし、彼のそばを通る時は私と他愛無い話をして、話しかけられる隙を作らない。クリスにガードされ続けたライアンは、次第に私に話しかける頻度が減っていった。
何よりありがたかったのは、ライアンの前以外では一切こちらに踏み込んでこないことだった。あくまで彼氏と彼女の"フリ"。色恋に興味のない私にとって、それが一番大切だった。
***
任務も山場を越え、BSAAは本格的な引き上げを許可された。
あれだけしつこかったライアンも、今では稀に目が合うとニコッと微笑んだり、ウインクをしてきたりするだけに留まっている。クリスが来てくれてから本当にストレスなく仕事ができた。
雑務をこなし、バタバタとデータ入力をしていると、私の横でテーブルに浅く腰掛けながら資料を見ていたクリスが呟いた。
「恋人役もお役御免だな」
「この数週間本当に助かったよ!ありがとう、変なことに巻き込んでごめんね」
「ライアンがさっきからチラチラおまえを見てる」
クリスは手元の書類から目を離さずに言った。
「そうなの?……色々あったけど、最後に一言挨拶でもしてこようかな。ライアンには一応お世話になったし」
「そういうところが、ナマエのいいところでもあり悪いところでもあるな…」
…あれ?同じようなことをちょっと前にクレアに言われた気がする。
さすが兄妹だ。
そう感心してクリスに目をやると彼もこちらを見ており、はたと目が合った。
「最後の仕事だ。見せつけておくか?」
「ん?見せつけるって何を……」
私が聞き終わるのが早いか、クリスは私の顎をそっと持ち上げたかと思うと、私にキスをした。
———フリをした。
私の背後、遠くの方にいるライアンの角度から見れば、きっと私とクリスはキスをしているように見えるだろう。
そうしていた時間はきっと3秒にも満たない短い時間だったが、私にはとても長く感じられた。
クリスは私の頭越しにライアンがこちらを見たことを確認したらしく、何事もなかったかのように私から離れていった。
「さあこれでもう完全に諦めるだろう。心置きなく挨拶してこい」
「……あ、ウン……データまとめたら……」
「——そうか?俺は先にこの辺のものを積んでくる。何かあれば呼んでくれ」
「ウン…ありがと…」
顔が熱くてまともに答えられない。
頭の中では何度も何度も、先程の一瞬が再生される。
ほんの少しタバコの匂いがしたな。
結構優しい手つきだったな。
……そして気づいてしまった。
クリスのことを考えるだけで、胸の奥がぎゅうっとする自分に。ああなんて単純なんだ私は。
でも、まだ。
これが恋心だと認めるのは……もう少し先送りにしよう。
***
「もしもし、兄さん?ナマエの件うまくいったんだってね、本人から連絡があったわ」
「別に特別なことはしていないがな。役に立てたなら何よりだ」
「それにしても大胆なことするのね!」
「何の話だ…?」
「え?無意識にああいうことする感じ?」
「………頼む。俺は何をしでかしたのか教えてくれ」
fin.
