Chris Redfield
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あなたの隣|後編
***
また来ると言っていたのに、あれからクリスは病室に姿を見せなかった。
ジルも同じだったから、きっと二人で任務に出たのだろう。
予定よりもずっと早く退院できることになったが、あの日の気まずさは拭えない。クリスには退院を知らせずにそのまま静かに家へ戻った。
退院後も私はできる限りクリスを避けていた。
廊下で姿を見かければ違う道を通り、トレーニングルームにいると知れば予定をずらした。
クリスが面会に来てくれたあの日から、私はBSAAを去る決意を固めていた。
辞めた先にどうなるか分からないけれど、一度決めてしまえば心は幾分か楽だ。
もっと早く決断していればよかったのかもしれない。
勤務を終え、自分の車へと歩く。上司にどう辞意を伝えるかを考えながら歩いていた私は、車の傍に立つクリスに気づかなかった。
「ナマエ」
「!!!」
驚いて顔を上げ、思わず持っていた荷物を落としそうになる。
「…そんなに驚くなよ」
クリスは苦笑いをした。
「ご、ごめん。考え事してたから…」
「いや。待ち伏せして悪かった。ここで待っていれば、必ず会えると思ったんでな」
大丈夫だよの意味を込めて、私はただ首を横に振る。
「その……スマホの方に連絡をくれたらよかったのに…。私の番号、知ってるでしょ?」
「出てくれない確信があった。避けられているからな」
「っ!! ……そんなこと、ない…」
「退院の日も知らせないで、廊下で見かけてもすぐに背を向ける。分からないわけがないだろ」
クリスに全てバレていたのか。バツが悪くなり、口篭った。
「ナマエの怪我のことを聞いて、俺がどれだけ心配したか分かるか?」
「……心配かけてごめんなさい…」
「やっと面会できたと思っても、復帰に焦るおまえを励ます上手い言葉ひとつ思いつきやしない。自分にうんざりしたよ」
もしかしてあの時のクリスのため息は——私に向けたものではなかったのかもしれない。分からないけれど。
私はクリスを見つめた。
「だから…病室で言えなかったことを伝えるために、ナマエを待ってた」
「言えなかったこと……?」
クリスは改めて私と向き合い、まっすぐ言葉を放った。
「ナマエ。俺には……おまえが必要だ」
息が止まった。
心臓が痛いくらいに跳ねる。
「BSAAがどうとかじゃない。俺自身に……ナマエが必要なんだ」
彼の真剣な眼差しに射すくめられ、私は視線を落とした。
「……でも、私は……みんなに比べて強くなくて……」
「何も言うな」
掠れた声で呟く私を遮り、クリスが一歩、距離を詰めた。
「ナマエの努力はみんなよく知ってる。誰よりも周りをカバーしていることも。おまえは足手纏いなんかじゃ絶対に無い」
そしてそっと手が伸びてきて、私の指先に触れる。
強くは握らず、ただ存在を確かめるように。
「俺にとって、お前は仲間以上の存在なんだ。……だから、心や体が弱っている時は焦らず、しっかり休んでほしい。
そしてできれば…——俺を頼ってほしい。俺の知らないところで、好きな女が苦しんでいるのは御免だ」
私はようやく気がついた。
自分の想いは、一方通行なんかじゃなかったのだと。
顔を上げると、真剣な瞳がそこにあった。
嘘も迷いもない、誠実な光。
「……私も」
涙がにじむが、これは嬉しい涙だ。
「……クリスが好き」
言葉にした瞬間、彼の腕が私を強く抱きしめた。
優しい温もりに包まれ、胸の奥の痛みがすべて溶けていく。
私はクリスの腕の中でゆっくりと深呼吸をして、BSAAでもう少し頑張る決意をした。
——私はここにいてもいいんだ。
そして、クリスの隣にも。
***
「……ねえ」
「ん?」
少し顔を離し、見上げる。
涙で濡れた私の頬を、彼の大きな手がそっと撫でた。
「さっき……『好きな女』って言ったよね」
「ああ」
「……そういうの、ちゃんと直接言ってほしいな」
それを聞いたクリスは一瞬きょとんとしたあと、少し照れたように口角を上げた。
「……ナマエ。お前が好きだ」
「うん。ふふっ。大好き」
彼の言葉を聞いただけで、胸の奥がふわりと温かくなる。
今度こそ、もう迷わない。
「……これからも、よろしくね」
「当たり前だ。もう逃がさない」
しばらくクリスのことを避けていたのを根に持っているのか、冗談めかしたセリフにまた笑みがこぼれる。
夜風が少し冷たかったけれど、彼の隣に立つだけで、不思議と心は穏やかだった。
fin.
***
また来ると言っていたのに、あれからクリスは病室に姿を見せなかった。
ジルも同じだったから、きっと二人で任務に出たのだろう。
予定よりもずっと早く退院できることになったが、あの日の気まずさは拭えない。クリスには退院を知らせずにそのまま静かに家へ戻った。
退院後も私はできる限りクリスを避けていた。
廊下で姿を見かければ違う道を通り、トレーニングルームにいると知れば予定をずらした。
クリスが面会に来てくれたあの日から、私はBSAAを去る決意を固めていた。
辞めた先にどうなるか分からないけれど、一度決めてしまえば心は幾分か楽だ。
もっと早く決断していればよかったのかもしれない。
勤務を終え、自分の車へと歩く。上司にどう辞意を伝えるかを考えながら歩いていた私は、車の傍に立つクリスに気づかなかった。
「ナマエ」
「!!!」
驚いて顔を上げ、思わず持っていた荷物を落としそうになる。
「…そんなに驚くなよ」
クリスは苦笑いをした。
「ご、ごめん。考え事してたから…」
「いや。待ち伏せして悪かった。ここで待っていれば、必ず会えると思ったんでな」
大丈夫だよの意味を込めて、私はただ首を横に振る。
「その……スマホの方に連絡をくれたらよかったのに…。私の番号、知ってるでしょ?」
「出てくれない確信があった。避けられているからな」
「っ!! ……そんなこと、ない…」
「退院の日も知らせないで、廊下で見かけてもすぐに背を向ける。分からないわけがないだろ」
クリスに全てバレていたのか。バツが悪くなり、口篭った。
「ナマエの怪我のことを聞いて、俺がどれだけ心配したか分かるか?」
「……心配かけてごめんなさい…」
「やっと面会できたと思っても、復帰に焦るおまえを励ます上手い言葉ひとつ思いつきやしない。自分にうんざりしたよ」
もしかしてあの時のクリスのため息は——私に向けたものではなかったのかもしれない。分からないけれど。
私はクリスを見つめた。
「だから…病室で言えなかったことを伝えるために、ナマエを待ってた」
「言えなかったこと……?」
クリスは改めて私と向き合い、まっすぐ言葉を放った。
「ナマエ。俺には……おまえが必要だ」
息が止まった。
心臓が痛いくらいに跳ねる。
「BSAAがどうとかじゃない。俺自身に……ナマエが必要なんだ」
彼の真剣な眼差しに射すくめられ、私は視線を落とした。
「……でも、私は……みんなに比べて強くなくて……」
「何も言うな」
掠れた声で呟く私を遮り、クリスが一歩、距離を詰めた。
「ナマエの努力はみんなよく知ってる。誰よりも周りをカバーしていることも。おまえは足手纏いなんかじゃ絶対に無い」
そしてそっと手が伸びてきて、私の指先に触れる。
強くは握らず、ただ存在を確かめるように。
「俺にとって、お前は仲間以上の存在なんだ。……だから、心や体が弱っている時は焦らず、しっかり休んでほしい。
そしてできれば…——俺を頼ってほしい。俺の知らないところで、好きな女が苦しんでいるのは御免だ」
私はようやく気がついた。
自分の想いは、一方通行なんかじゃなかったのだと。
顔を上げると、真剣な瞳がそこにあった。
嘘も迷いもない、誠実な光。
「……私も」
涙がにじむが、これは嬉しい涙だ。
「……クリスが好き」
言葉にした瞬間、彼の腕が私を強く抱きしめた。
優しい温もりに包まれ、胸の奥の痛みがすべて溶けていく。
私はクリスの腕の中でゆっくりと深呼吸をして、BSAAでもう少し頑張る決意をした。
——私はここにいてもいいんだ。
そして、クリスの隣にも。
***
「……ねえ」
「ん?」
少し顔を離し、見上げる。
涙で濡れた私の頬を、彼の大きな手がそっと撫でた。
「さっき……『好きな女』って言ったよね」
「ああ」
「……そういうの、ちゃんと直接言ってほしいな」
それを聞いたクリスは一瞬きょとんとしたあと、少し照れたように口角を上げた。
「……ナマエ。お前が好きだ」
「うん。ふふっ。大好き」
彼の言葉を聞いただけで、胸の奥がふわりと温かくなる。
今度こそ、もう迷わない。
「……これからも、よろしくね」
「当たり前だ。もう逃がさない」
しばらくクリスのことを避けていたのを根に持っているのか、冗談めかしたセリフにまた笑みがこぼれる。
夜風が少し冷たかったけれど、彼の隣に立つだけで、不思議と心は穏やかだった。
fin.
