Chris Redfield
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あなたの隣|前編
病室の窓から差し込む夕陽が、白い壁に長く影を落としていた。
ベッドに横たわったまま、私はため息をひとつ吐く。今日もまた、面会を断った。
クリスがわざわざ駆けつけてくれたと聞いたのは数日前のことだ。
別の現場から帰ってきたばかりのはずなのに、私の怪我を知るや否や病院へ来てくれたらしい。
けれど、その気遣いが今は苦しかった。
会えばきっと、弱り切った自分の心を悟られてしまうから。
——私は、クリスとジルの背中を追ってここまで来た。
無理をしてでもBSAAに入った。
だが日々の任務で思い知らされるのは、圧倒的な力の差ばかりだ。
誰もがエース級の実力を持つこの組織で、私はいつも平凡なまま。自主トレーニングを人一倍重ねても、結局は追いつけない。
今回の任務だってそうだ。
油断していたわけではないが大型B.O.Wの攻撃を受け、吹き飛ばされてしまった。
覚えている最後の景色は、敵の振り上げた大きな腕。そこから先の記憶がない。
現場に居合わせた隊員に後から聞けば、私は壁に激突し気絶したらしい。仲間が助けてくれていなければ、今頃命はないだろう。
私が救護を受けている間に現場は鎮圧。数日前に、ここ、BSAA北米支部へと帰還した。
あと一瞬でも反応が早ければ。
周囲をもっと観察できていれば。
あの一撃を避けられたかもしれない。仲間に迷惑をかけずに済んだかもしれない。
そんな「もしも」が、頭の中で何度もぐるぐると繰り返される。
私はこの組織に、本当に必要とされているのだろうか。
前線に立ち続ける資格があるのだろうか。
クリスのまっすぐな眼差し……あの人に今会えば、私の弱さを簡単に見透かしてしまうだろう。
以前、クリスの前で弱音を吐いたときには、「BSAAにはおまえが必要だ」と励ましてくれた。
けれど、いつまでそう言い続けてくれる?誰だって何度も同じ話をされたらうんざりするだろう。クリスの隣にいたい一心でここまで来たが、クリスや仲間が、私のせいで致命傷を負う前に……潔く身を引くべきではないか。
そんな考えが浮かんでは消えていく。
——次の日。
朝はジルが、夕方にはクリスが面会に来たらしい。「まだ体調が優れないみたいで、と断っておきましたよ」と看護師。
「ありがとうございます。……嘘に付き合わせてすみません」
「いえ、お気になさらず。レッドフィールドさんが、何日も会えないほど体調が戻らないなんてちゃんと検査したのか?もう一度くまなく見てやってくれないかと仰っていました。私たちの腕を疑うのですか?と言ったら渋々お帰りになりましたけど」
看護師はテキパキと採血しながら笑って言った。
「あ……はは。クリスったら…」
いい加減、断り続けるのも限界か。
看護師を嘘に付き合わせるのも。
……明日からは面会を受け入れよう。そう決めた。
***
翌日。
ノックの音に私は顔を上げる。
「……ナマエ」
クリスの低い声が聞こえ、どうぞと促すとゆっくり扉が開き、こちらの様子を伺いながらクリスが入室した。
彼を目にした瞬間、胸の奥がきゅっと縮まる。
「……怪我の具合はどうだ?」
「頭を数針縫ったけど大したことないよ。脳へのダメージもないし、感染もなかった」
「そうか……なによりだ」
安堵の色を隠しきれない彼の表情。
本当に心配してくれていたのだとわかるのに、私は素直に喜べなかった。
「……私がもっと気をつけていれば、迷惑をかけずに済んだのに」
「迷惑? そんなこと誰も思っていないだろ。とにかく、生きてここにいる。それでいいんだ」
彼の言葉はいつも優しい。
けれどその優しさが、今の私には毒だ。
弱さを悟られたくなくて、私は無理に明るく笑った。
「まだまだトレーニングが足りないな、って思ったの。退院したら、私もっと頑張って早く部隊に戻らなくちゃね!」
「ナマエは十分頑張ってる。全身打撲なんだ、復帰するにしろもう少し時間を空けてから……」
「長くは休めないわ。少しでも早く前線に復帰して、みんなに恩を返したいの」
「…恩を返したいと思うのはいいことだがな。恩を売りたくて行動したんじゃないだろう、隊のメンバーは。とにかく、まずは療養だ」
クリスが私のためを思って言ってくれているのは百も承知だ。
しかし焦っていた私は、つい皮肉を口にしてしまっていた。
「………強くて頼れるクリスには、足手纏いになる側の気持ちは分からないでしょう?」
クリスの目が驚きに見開かれる。
自分でもわかっていた。完全に突き放すような言葉だった。
沈黙が流れ、気まずさから私は顔を背ける。
次の瞬間、クリスの口から小さなため息が漏れた。
その音は、鋭い刃のように胸を突いた。
指の先が冷たくなるような感覚。
呆れられたんだ、好きな人から。
もういい、と見限られたんだ。
嫌われるような言葉を口にしておきながら、いざそうなるとこんなにも耐え難いなんて。
クリスなら私に寄り添い続けてくれると、心の奥底で甘えていた証拠だろう。
喉の奥がつんとした。
「……面会に来てくれて、嬉しかったよ」
泣きそうなのを悟られないよう、なんとか声を絞り出す。
「ジルにも……私が元気だったって伝えておいてね」
クリスから何か言いかけた気配を感じた。
けれど、私は顔をそむけたまま、退室を促すように目を閉じた。
「………また来る」
やがてクリスが歩き出し、静かに扉が閉まる音。
それだけが、部屋に残った。
病室の窓から差し込む夕陽が、白い壁に長く影を落としていた。
ベッドに横たわったまま、私はため息をひとつ吐く。今日もまた、面会を断った。
クリスがわざわざ駆けつけてくれたと聞いたのは数日前のことだ。
別の現場から帰ってきたばかりのはずなのに、私の怪我を知るや否や病院へ来てくれたらしい。
けれど、その気遣いが今は苦しかった。
会えばきっと、弱り切った自分の心を悟られてしまうから。
——私は、クリスとジルの背中を追ってここまで来た。
無理をしてでもBSAAに入った。
だが日々の任務で思い知らされるのは、圧倒的な力の差ばかりだ。
誰もがエース級の実力を持つこの組織で、私はいつも平凡なまま。自主トレーニングを人一倍重ねても、結局は追いつけない。
今回の任務だってそうだ。
油断していたわけではないが大型B.O.Wの攻撃を受け、吹き飛ばされてしまった。
覚えている最後の景色は、敵の振り上げた大きな腕。そこから先の記憶がない。
現場に居合わせた隊員に後から聞けば、私は壁に激突し気絶したらしい。仲間が助けてくれていなければ、今頃命はないだろう。
私が救護を受けている間に現場は鎮圧。数日前に、ここ、BSAA北米支部へと帰還した。
あと一瞬でも反応が早ければ。
周囲をもっと観察できていれば。
あの一撃を避けられたかもしれない。仲間に迷惑をかけずに済んだかもしれない。
そんな「もしも」が、頭の中で何度もぐるぐると繰り返される。
私はこの組織に、本当に必要とされているのだろうか。
前線に立ち続ける資格があるのだろうか。
クリスのまっすぐな眼差し……あの人に今会えば、私の弱さを簡単に見透かしてしまうだろう。
以前、クリスの前で弱音を吐いたときには、「BSAAにはおまえが必要だ」と励ましてくれた。
けれど、いつまでそう言い続けてくれる?誰だって何度も同じ話をされたらうんざりするだろう。クリスの隣にいたい一心でここまで来たが、クリスや仲間が、私のせいで致命傷を負う前に……潔く身を引くべきではないか。
そんな考えが浮かんでは消えていく。
——次の日。
朝はジルが、夕方にはクリスが面会に来たらしい。「まだ体調が優れないみたいで、と断っておきましたよ」と看護師。
「ありがとうございます。……嘘に付き合わせてすみません」
「いえ、お気になさらず。レッドフィールドさんが、何日も会えないほど体調が戻らないなんてちゃんと検査したのか?もう一度くまなく見てやってくれないかと仰っていました。私たちの腕を疑うのですか?と言ったら渋々お帰りになりましたけど」
看護師はテキパキと採血しながら笑って言った。
「あ……はは。クリスったら…」
いい加減、断り続けるのも限界か。
看護師を嘘に付き合わせるのも。
……明日からは面会を受け入れよう。そう決めた。
***
翌日。
ノックの音に私は顔を上げる。
「……ナマエ」
クリスの低い声が聞こえ、どうぞと促すとゆっくり扉が開き、こちらの様子を伺いながらクリスが入室した。
彼を目にした瞬間、胸の奥がきゅっと縮まる。
「……怪我の具合はどうだ?」
「頭を数針縫ったけど大したことないよ。脳へのダメージもないし、感染もなかった」
「そうか……なによりだ」
安堵の色を隠しきれない彼の表情。
本当に心配してくれていたのだとわかるのに、私は素直に喜べなかった。
「……私がもっと気をつけていれば、迷惑をかけずに済んだのに」
「迷惑? そんなこと誰も思っていないだろ。とにかく、生きてここにいる。それでいいんだ」
彼の言葉はいつも優しい。
けれどその優しさが、今の私には毒だ。
弱さを悟られたくなくて、私は無理に明るく笑った。
「まだまだトレーニングが足りないな、って思ったの。退院したら、私もっと頑張って早く部隊に戻らなくちゃね!」
「ナマエは十分頑張ってる。全身打撲なんだ、復帰するにしろもう少し時間を空けてから……」
「長くは休めないわ。少しでも早く前線に復帰して、みんなに恩を返したいの」
「…恩を返したいと思うのはいいことだがな。恩を売りたくて行動したんじゃないだろう、隊のメンバーは。とにかく、まずは療養だ」
クリスが私のためを思って言ってくれているのは百も承知だ。
しかし焦っていた私は、つい皮肉を口にしてしまっていた。
「………強くて頼れるクリスには、足手纏いになる側の気持ちは分からないでしょう?」
クリスの目が驚きに見開かれる。
自分でもわかっていた。完全に突き放すような言葉だった。
沈黙が流れ、気まずさから私は顔を背ける。
次の瞬間、クリスの口から小さなため息が漏れた。
その音は、鋭い刃のように胸を突いた。
指の先が冷たくなるような感覚。
呆れられたんだ、好きな人から。
もういい、と見限られたんだ。
嫌われるような言葉を口にしておきながら、いざそうなるとこんなにも耐え難いなんて。
クリスなら私に寄り添い続けてくれると、心の奥底で甘えていた証拠だろう。
喉の奥がつんとした。
「……面会に来てくれて、嬉しかったよ」
泣きそうなのを悟られないよう、なんとか声を絞り出す。
「ジルにも……私が元気だったって伝えておいてね」
クリスから何か言いかけた気配を感じた。
けれど、私は顔をそむけたまま、退室を促すように目を閉じた。
「………また来る」
やがてクリスが歩き出し、静かに扉が閉まる音。
それだけが、部屋に残った。
