Chris Redfield
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私のヒーロー
彼女がBSAAに入ったのは、ただひとつの理由だった。
クリス・レッドフィールドに憧れて。
数々のバイオテロを生き抜いてきた英雄。自分もBSAAに入りその背中を追いかけたい、近くで見ていたい。
"何を考えているかわからない"
昔からナマエがよく言われる言葉だ。
表情筋が死んでいると本人も自覚しているが、どう頑張っても変えられないコンプレックスは誰の人生にだってあるだろう。
それは別として、憧れの人の元で働きたいという気持ちはずっと彼女の中で燃え続けていた。その一心で厳しい訓練を耐え抜き、正式なBSAAエージェントとして採用されたとき、ナマエは心の中で拳を握った。
そしてついにクリスと同じチームに配属され、ナマエは内心夢見心地で仕事をしていた。あの"憧れの人"が目の前にいるのだ。
男らしくて、仲間想いで。
それでいて少し抜けているところがあることを、一緒に働く中で知った。
彼を知れば知るほど、ただの憧れは恋心へと変わっていった。
クリスさんには恋人は居ないと聞いた。なら自分がそうなりたいと思ったナマエは一度クリスへその募る想いを伝えたが、言い方が悪かったのかそれとも彼女のポーカーフェイスが仇となったのか……クリスには告白だとすら思ってもらえなかった。胸の奥がチクリと痛んだが、それでも諦める気持ちは微塵もなかった。
むしろその時の反省を生かし、ナマエはクリスに本気だと分かってもらえるまで何度でも言葉で伝えるとこにした。
「おはようございますクリスさん。今日も素敵です。好きです」
「ん"んっ……おいナマエ、からかうな」
真顔の一息でそんなことを言う彼女に、クリスは咳払いをして困惑するばかり。
クールで無表情気味な彼女からの褒め言葉は、冗談なのか本気なのかクリスには分からなかった。だから毎日のように口にする「好きです」「恋人になってください」などというストレートな言葉は、彼を揶揄っているようにも、真剣そのものにも思えた。
「私を恋人にしてくれる覚悟はつきましたか?」
「仕事中にやめないか」
「仕事が終わったら、考えてくださるんですね」
「そういう意味じゃないだろ……」
クリスは頭をポリポリと掻く。
毎日毎日飽きずによくやるなぁ、とほかの仲間がからかう。
そんなやり取りが、日常になっていた。
***
最初のうち、クリスは「歳が一回りも違う後輩」に惚れ込まれていることなど真に受けなかった。彼女の気持ちはただの憧れか、危険な任務を共にする中で生まれた一時的な高揚だと考えていた。
それに、ナマエはクリスへ愛をぶつけるだけで、特別ベタベタと付き纏うわけでもやたらと話しかけるでもない。必要なときだけ近づき言いたいことを言うと、またすぐに自分の世界へ戻っていく。まるで気まぐれな猫みたいだ、とクリスは思った。
彼女を突き放すこともできるが、妹よりも歳の離れている後輩を敢えて傷つけるようなことは、どうしても出来なかった。
そのうちクリスはナマエの本当の心のうちを読み取ろうと、彼女を目で追うことが増えていた。
そして見えたのは、ミッションに取り組む彼女の真剣な眼差し。仲間を守ろうとするためらいのない動き。どんな状況でも冷静で、決して諦めない心。
──そうだ。いつだってナマエは真剣だ。
俺への愛の言葉も、きっと。
それでもクリスは気付かないふりをした。自分は年上だし、彼女はまだ若い。
(流されちゃいけない。ナマエの未来を縛るわけには……)
そう言い聞かせるようにいつもの彼女のアタックを「軽口」として受け流し続けたが、この関係をクリス自身も悪くは思っていないことは、紛れもない事実だった。
***
ある日の任務後、基地に戻った夜。
他の隊員は遅れており、作戦室でナマエとクリスは2人きりになった。
「クリスさん。しばらく待機でしょうか」
「そうだな。疲れただろう、休めるうちに休んでおけ」
「ありがとうございます」
2人はそれぞれ適当に腰掛けながらしばらく過ごしていたが、時々入る無線の状況からしてまだ皆が帰ってくるまで時間がかかりそうだった。
無言の時間が流れる。
先に沈黙を破ったのはクリスだった。
「……今日は言わないんだな」
「…?、何をでしょう」
「その……好きだとか付き合いたいだとかいつも言っているアレだ」
「ああ、えーと」
ナマエは数秒天井を見つめ、思いついたように答えた。
「"押してダメなら引いてみろ"ってやつですかね」
「……適当に答えていないか、ナマエ」
「いつだって真剣なんですけどね。なかなか伝わらないみたいです」
相変わらず彼女は淡々と答えた。
この際だから聞くが、とクリスは続ける。
「俺なんかのどこが良いんだ?さっぱり分からん」
「たくさんありますよ。まず顔が好きです」
「顔…」
予想外の一発目だな。
クリスは他人事のように思った。
「それから仲間想いなところ。有言実行の頼り甲斐があるところも好きですね。あと…」
「う…もういい分かった。褒め言葉はありがたく受け取っておくよ」
自分で聞いておいてむず痒くなり、ナマエの言葉を遮った。
「……一番好きなところは、優しいところ」
「優しい?俺がか?」
「クリスさんは……。
クリスさんは私に、もっと笑えばいいのにとか、女のくせに愛想がないとか…言わないから」
ぽつりと話す彼女にいつもの凛々しさはなく、ひとりの可憐な女性がそこに居た。
触れたいと思ってしまったのは彼女を慰めるためか……それともナマエを無意識のうちに特別な存在として見ていたからなのか。
「ナマエはそのままでいいだろう」
「……そういうことをサラッというクリスさん。本当に好きです」
「分かった分かった」
クリスが照れ隠しにそうあしらうと、ナマエは椅子をガタッと揺らして立ち上がった。驚いてそちらを見ると、彼女はツカツカと目の前まで歩いてきて立ち止まった。
「そろそろあしらうのをやめて下さい。まだ伝わりませんか。私は本気です」
そう言うやいなやクリスの胸倉を掴み、ぐいと顔を引き寄せる。
そして──そのまま唇を重ねた。
クリスは一瞬凍り付いたが、すぐにナマエの肩を掴んで引き剥がす。
「これで…ッ今度こそ伝わりましたか?」
わずかにナマエの声が震えている。
普段は冷静なはずの彼女の顔が赤く染まっている様子に、クリスは思わず笑みをこぼした。
彼女のこの顔は俺だけが知っている。
その事実に、胸が不思議な充足感と快感で満たされた。そしてまだ見ぬ彼女の仕草も表情も、すべて自分のものにしたいと思った。
「なんで笑って──……」
「まだまだお子様だな。キスはこうするんだ」
彼は腕を回し固まるナマエを抱き寄せ、ゆっくりと深い口づけを返した。
触れるだけの軽いものではなく、彼女の世界を攫うようなキスだった。
「……っ、んぅ……」
ナマエの身体から力が抜けていくのが分かる。
(まったく……俺は何をやってるんだ。年甲斐もなく若い子に絆されるなんて)
頭では冷静だった。
唇を離し、クリスは低い声で告げる。
「嫌なら抵抗するべきだったな」
唇を離されたあともナマエはしばらく呼吸が整わず、胸が上下する。その乱れを隠すように彼女は必死に背筋を伸ばした。
「…抵抗? 何を言っているんです。こんなチャンス、逃すわけないでしょう」
予想外の勝ち気な返答に、クリスは目を見開いた。
「さあ。クリスさん。ここまでしておいて逃げませんよね」
「に、逃げるって…」
「それとも恋人以外とも"あんなキス"を平気でする人だという事ですか」
「そんな女たらしに見えるか?俺が」
「見えないから聞きます。私のこと、好きですか」
まさか自分が追い詰められる側だとは。
「参ったな、本当に……」
──完全に俺の負けだ。
ナマエに落とされてしまった。
「ああ。好きだ。ナマエ」
***
それから二人は、少しずつ恋人としての関係を確かなものにしていった。
表面上は今まで通りの仕事仲間。だが任務の合間に交わす視線や、そっと触れ合う手の温もりが、互いの気持ちを物語っていた。
「今日も素敵ですクリスさん」
「ふっ……毎日飽きもせずによく言えるな」
「当たり前ですよ」
これからもあなたはずっと、私のヒーローなんです。
気持ちが結ばれてもまだ惜しみなく続く愛の言葉に、今ではクリスも笑って応じるようになった。
fin.
彼女がBSAAに入ったのは、ただひとつの理由だった。
クリス・レッドフィールドに憧れて。
数々のバイオテロを生き抜いてきた英雄。自分もBSAAに入りその背中を追いかけたい、近くで見ていたい。
"何を考えているかわからない"
昔からナマエがよく言われる言葉だ。
表情筋が死んでいると本人も自覚しているが、どう頑張っても変えられないコンプレックスは誰の人生にだってあるだろう。
それは別として、憧れの人の元で働きたいという気持ちはずっと彼女の中で燃え続けていた。その一心で厳しい訓練を耐え抜き、正式なBSAAエージェントとして採用されたとき、ナマエは心の中で拳を握った。
そしてついにクリスと同じチームに配属され、ナマエは内心夢見心地で仕事をしていた。あの"憧れの人"が目の前にいるのだ。
男らしくて、仲間想いで。
それでいて少し抜けているところがあることを、一緒に働く中で知った。
彼を知れば知るほど、ただの憧れは恋心へと変わっていった。
クリスさんには恋人は居ないと聞いた。なら自分がそうなりたいと思ったナマエは一度クリスへその募る想いを伝えたが、言い方が悪かったのかそれとも彼女のポーカーフェイスが仇となったのか……クリスには告白だとすら思ってもらえなかった。胸の奥がチクリと痛んだが、それでも諦める気持ちは微塵もなかった。
むしろその時の反省を生かし、ナマエはクリスに本気だと分かってもらえるまで何度でも言葉で伝えるとこにした。
「おはようございますクリスさん。今日も素敵です。好きです」
「ん"んっ……おいナマエ、からかうな」
真顔の一息でそんなことを言う彼女に、クリスは咳払いをして困惑するばかり。
クールで無表情気味な彼女からの褒め言葉は、冗談なのか本気なのかクリスには分からなかった。だから毎日のように口にする「好きです」「恋人になってください」などというストレートな言葉は、彼を揶揄っているようにも、真剣そのものにも思えた。
「私を恋人にしてくれる覚悟はつきましたか?」
「仕事中にやめないか」
「仕事が終わったら、考えてくださるんですね」
「そういう意味じゃないだろ……」
クリスは頭をポリポリと掻く。
毎日毎日飽きずによくやるなぁ、とほかの仲間がからかう。
そんなやり取りが、日常になっていた。
***
最初のうち、クリスは「歳が一回りも違う後輩」に惚れ込まれていることなど真に受けなかった。彼女の気持ちはただの憧れか、危険な任務を共にする中で生まれた一時的な高揚だと考えていた。
それに、ナマエはクリスへ愛をぶつけるだけで、特別ベタベタと付き纏うわけでもやたらと話しかけるでもない。必要なときだけ近づき言いたいことを言うと、またすぐに自分の世界へ戻っていく。まるで気まぐれな猫みたいだ、とクリスは思った。
彼女を突き放すこともできるが、妹よりも歳の離れている後輩を敢えて傷つけるようなことは、どうしても出来なかった。
そのうちクリスはナマエの本当の心のうちを読み取ろうと、彼女を目で追うことが増えていた。
そして見えたのは、ミッションに取り組む彼女の真剣な眼差し。仲間を守ろうとするためらいのない動き。どんな状況でも冷静で、決して諦めない心。
──そうだ。いつだってナマエは真剣だ。
俺への愛の言葉も、きっと。
それでもクリスは気付かないふりをした。自分は年上だし、彼女はまだ若い。
(流されちゃいけない。ナマエの未来を縛るわけには……)
そう言い聞かせるようにいつもの彼女のアタックを「軽口」として受け流し続けたが、この関係をクリス自身も悪くは思っていないことは、紛れもない事実だった。
***
ある日の任務後、基地に戻った夜。
他の隊員は遅れており、作戦室でナマエとクリスは2人きりになった。
「クリスさん。しばらく待機でしょうか」
「そうだな。疲れただろう、休めるうちに休んでおけ」
「ありがとうございます」
2人はそれぞれ適当に腰掛けながらしばらく過ごしていたが、時々入る無線の状況からしてまだ皆が帰ってくるまで時間がかかりそうだった。
無言の時間が流れる。
先に沈黙を破ったのはクリスだった。
「……今日は言わないんだな」
「…?、何をでしょう」
「その……好きだとか付き合いたいだとかいつも言っているアレだ」
「ああ、えーと」
ナマエは数秒天井を見つめ、思いついたように答えた。
「"押してダメなら引いてみろ"ってやつですかね」
「……適当に答えていないか、ナマエ」
「いつだって真剣なんですけどね。なかなか伝わらないみたいです」
相変わらず彼女は淡々と答えた。
この際だから聞くが、とクリスは続ける。
「俺なんかのどこが良いんだ?さっぱり分からん」
「たくさんありますよ。まず顔が好きです」
「顔…」
予想外の一発目だな。
クリスは他人事のように思った。
「それから仲間想いなところ。有言実行の頼り甲斐があるところも好きですね。あと…」
「う…もういい分かった。褒め言葉はありがたく受け取っておくよ」
自分で聞いておいてむず痒くなり、ナマエの言葉を遮った。
「……一番好きなところは、優しいところ」
「優しい?俺がか?」
「クリスさんは……。
クリスさんは私に、もっと笑えばいいのにとか、女のくせに愛想がないとか…言わないから」
ぽつりと話す彼女にいつもの凛々しさはなく、ひとりの可憐な女性がそこに居た。
触れたいと思ってしまったのは彼女を慰めるためか……それともナマエを無意識のうちに特別な存在として見ていたからなのか。
「ナマエはそのままでいいだろう」
「……そういうことをサラッというクリスさん。本当に好きです」
「分かった分かった」
クリスが照れ隠しにそうあしらうと、ナマエは椅子をガタッと揺らして立ち上がった。驚いてそちらを見ると、彼女はツカツカと目の前まで歩いてきて立ち止まった。
「そろそろあしらうのをやめて下さい。まだ伝わりませんか。私は本気です」
そう言うやいなやクリスの胸倉を掴み、ぐいと顔を引き寄せる。
そして──そのまま唇を重ねた。
クリスは一瞬凍り付いたが、すぐにナマエの肩を掴んで引き剥がす。
「これで…ッ今度こそ伝わりましたか?」
わずかにナマエの声が震えている。
普段は冷静なはずの彼女の顔が赤く染まっている様子に、クリスは思わず笑みをこぼした。
彼女のこの顔は俺だけが知っている。
その事実に、胸が不思議な充足感と快感で満たされた。そしてまだ見ぬ彼女の仕草も表情も、すべて自分のものにしたいと思った。
「なんで笑って──……」
「まだまだお子様だな。キスはこうするんだ」
彼は腕を回し固まるナマエを抱き寄せ、ゆっくりと深い口づけを返した。
触れるだけの軽いものではなく、彼女の世界を攫うようなキスだった。
「……っ、んぅ……」
ナマエの身体から力が抜けていくのが分かる。
(まったく……俺は何をやってるんだ。年甲斐もなく若い子に絆されるなんて)
頭では冷静だった。
唇を離し、クリスは低い声で告げる。
「嫌なら抵抗するべきだったな」
唇を離されたあともナマエはしばらく呼吸が整わず、胸が上下する。その乱れを隠すように彼女は必死に背筋を伸ばした。
「…抵抗? 何を言っているんです。こんなチャンス、逃すわけないでしょう」
予想外の勝ち気な返答に、クリスは目を見開いた。
「さあ。クリスさん。ここまでしておいて逃げませんよね」
「に、逃げるって…」
「それとも恋人以外とも"あんなキス"を平気でする人だという事ですか」
「そんな女たらしに見えるか?俺が」
「見えないから聞きます。私のこと、好きですか」
まさか自分が追い詰められる側だとは。
「参ったな、本当に……」
──完全に俺の負けだ。
ナマエに落とされてしまった。
「ああ。好きだ。ナマエ」
***
それから二人は、少しずつ恋人としての関係を確かなものにしていった。
表面上は今まで通りの仕事仲間。だが任務の合間に交わす視線や、そっと触れ合う手の温もりが、互いの気持ちを物語っていた。
「今日も素敵ですクリスさん」
「ふっ……毎日飽きもせずによく言えるな」
「当たり前ですよ」
これからもあなたはずっと、私のヒーローなんです。
気持ちが結ばれてもまだ惜しみなく続く愛の言葉に、今ではクリスも笑って応じるようになった。
fin.
