壱 月の顕現
国木田さんに言われて、彼女の金髪を追いかける。見ると、エレベーターを待っている様子で携帯電話を操作していた。
「零さん、本日はありがとうございました」
「ん? いえいえー、私の方こそ感謝です。案内までしてもらえると思ってなかったので」
僕が声をかけると、くるりと振り返って彼女はそう言った。携帯電話の画面を消し、此方を向いて笑っている。零さんは携帯電話を左手に持ち変えて、右手を軽く振った。
「それにしてもごめんねー、あんな面倒そうな依頼しちゃって。……って、うわっ、タメ口きいちゃったすみません!」
「え? ああ、いや、別に……抑、僕の方が年下ですし……!」
慌てるように謝罪する零さん。僕も言ってはみたけれど、それでも少し申し訳なさそうな表情を彼女は消さない。
「いや、ほら……依頼してる立場なのにタメ口だと、なんかちょっと店員さんに横柄な人みたいになっちゃうじゃん?」
ってうわ、またやっちゃった。中島さん良い人そうでついやっちゃうな……と、零さんは白のキャップを深めに被って顔を隠す。
その仕草は迚愛らしいと思ってしまうのは何故だろう。彼女の行動一つ一つに注目して、目線を逸らせない。
「気にしなくて良いですよ。零さんが厭じゃないのなら、タメ口でも構いませんし」
「そう? じゃあごめんだけどそうさせてもらうね、ありがと!」
彼女は目を細めて笑う。格好の良い唇から白くて歯並びの良い歯が覗いた。
エレベーターが来るまでの話している間は短かった。エレベーターが到着し、扉が開く。
スッと乗り込む零さんの後、僕も乗り込む。すると、少しだけ驚いた顔をされた。
「へえ、見送りってエレベーターの中まで来てくれるんだ。はじめて知ったな」
あー、いや、ほら。仕事上、密室で男性と二人きりだとちょっとあれかなーって思ったりしたんだけど。
そう言われて、僕は自分の行動が不味かったかもしれないと思った。
そうだ。彼女は芸能人なのだった。密室。それも二人きりというのは配慮が足りていなかった。
「あ、ごめんなさい! ぼ、僕降りた方が良いですよね」
「まあそれはそうだね」
笑顔でバッサリと切り捨てられた。矢張、遠慮するべきだっただろう。彼女への心遣いが足りていなかった。
今すぐにでも降りなければ。適当な階のボタンを押そうと手を伸ばしたが、それは叶わなかった。
「ちょ、冗談だって! 嘘々……いや嘘ではないけど護衛依頼なんだし気にしなくて良いってば!」
右手を僕の左腕に、左手を顎に添えて、カラカラと零さんは笑った。笑う度に彼女のツインテールが揺れる。
エレベーターの到着音が鳴る。扉が開き、外界を映し出した。
僕は開ボタンを押す。零さんは乗り込んだ時と同じように、スッとエレベーターを降りた。
「君たち武装探偵社は良いね、善人そうだ。此れなら安心して任せられる」
「それは良かったです、期待に応えられるよう頑張ります」
此方に背中を向けて、道を歩き出す零さん。
扉が閉まる直前、振り向いて言われた。
____君たちは綺麗な目をしているね、と。
「零さん、本日はありがとうございました」
「ん? いえいえー、私の方こそ感謝です。案内までしてもらえると思ってなかったので」
僕が声をかけると、くるりと振り返って彼女はそう言った。携帯電話の画面を消し、此方を向いて笑っている。零さんは携帯電話を左手に持ち変えて、右手を軽く振った。
「それにしてもごめんねー、あんな面倒そうな依頼しちゃって。……って、うわっ、タメ口きいちゃったすみません!」
「え? ああ、いや、別に……抑、僕の方が年下ですし……!」
慌てるように謝罪する零さん。僕も言ってはみたけれど、それでも少し申し訳なさそうな表情を彼女は消さない。
「いや、ほら……依頼してる立場なのにタメ口だと、なんかちょっと店員さんに横柄な人みたいになっちゃうじゃん?」
ってうわ、またやっちゃった。中島さん良い人そうでついやっちゃうな……と、零さんは白のキャップを深めに被って顔を隠す。
その仕草は迚愛らしいと思ってしまうのは何故だろう。彼女の行動一つ一つに注目して、目線を逸らせない。
「気にしなくて良いですよ。零さんが厭じゃないのなら、タメ口でも構いませんし」
「そう? じゃあごめんだけどそうさせてもらうね、ありがと!」
彼女は目を細めて笑う。格好の良い唇から白くて歯並びの良い歯が覗いた。
エレベーターが来るまでの話している間は短かった。エレベーターが到着し、扉が開く。
スッと乗り込む零さんの後、僕も乗り込む。すると、少しだけ驚いた顔をされた。
「へえ、見送りってエレベーターの中まで来てくれるんだ。はじめて知ったな」
あー、いや、ほら。仕事上、密室で男性と二人きりだとちょっとあれかなーって思ったりしたんだけど。
そう言われて、僕は自分の行動が不味かったかもしれないと思った。
そうだ。彼女は芸能人なのだった。密室。それも二人きりというのは配慮が足りていなかった。
「あ、ごめんなさい! ぼ、僕降りた方が良いですよね」
「まあそれはそうだね」
笑顔でバッサリと切り捨てられた。矢張、遠慮するべきだっただろう。彼女への心遣いが足りていなかった。
今すぐにでも降りなければ。適当な階のボタンを押そうと手を伸ばしたが、それは叶わなかった。
「ちょ、冗談だって! 嘘々……いや嘘ではないけど護衛依頼なんだし気にしなくて良いってば!」
右手を僕の左腕に、左手を顎に添えて、カラカラと零さんは笑った。笑う度に彼女のツインテールが揺れる。
エレベーターの到着音が鳴る。扉が開き、外界を映し出した。
僕は開ボタンを押す。零さんは乗り込んだ時と同じように、スッとエレベーターを降りた。
「君たち武装探偵社は良いね、善人そうだ。此れなら安心して任せられる」
「それは良かったです、期待に応えられるよう頑張ります」
此方に背中を向けて、道を歩き出す零さん。
扉が閉まる直前、振り向いて言われた。
____君たちは綺麗な目をしているね、と。