壱 月の顕現
「いやー、助かりました。幾分こういう処には来ないものですから……」
此処は武装探偵社の社内。テーブルに置かれた紅茶の入ったティーカップを手に取り、彼女は云う。
月無 零。そう名乗った彼女を連れ、僕達は零さんを探偵社まで案内した。つい先程のことだ。
「予約時間が過ぎていたのでめちゃめちゃ焦りましたよー、本当に有り難うございました。えーっと…」
「彼の名前は中島敦。そして私は太宰治です。美しい方、どうか私と心中を…」
「この唐変木! いい加減にしろ!」
ソファーに座っている零さんの手を取り心中へ誘う太宰さん。相変わらずぶれないなあ、なんて思う間もなく国木田さんによって太宰さんは奥へと引き摺られていった。
見慣れた光景と云われればそうなのだが、一つ違うとすれば今しがた心中に誘われた人が人間離れした美しさを持っていることだろう。
「ちょっとナオミ、良くないッてそういうのは……!」
「あらー?昨日あんなことを云っていたのは兄様の方……」
「で、でも御客さんも来る時間だし……」
そう云いながら探偵社の扉を開けたのは谷崎さんとその妹、ナオミさん。下にある喫茶店「うずまき」へ御茶をしに行っていたようで、ふんわりと珈琲の香りが漂ってくる。
何時ものようにお二人の兄妹仲の良さに感心していたのだが、何故か二人がいきなり動きを止めた。
目線の先に有るのは金髪のツインテール。
「……れ、零ちゃん!?」
「今日の依頼者って零ちゃんでしたの!?」
驚愕の顔を浮かべ動揺する谷崎さんとナオミさん。その様子に思わず僕は聞いてしまった。
「お二人ともそんなに驚いて……どうしたんです?」
「どうもこうもないよ! あの天才アイドル歌い手の零ちゃんだよ、敦くん知らないの!?」
やや興奮した風に谷崎さんにそう云われ、携帯電話の画面を見せてもらう。動画サイトの一頁、一チャンネルの画面。其処に表示されていたのは……
「チャンネル登録者……五百万人!?」
殆ど叫ぶようにそう云うと、其のチャンネルの持ち主である人物は少し照れたように笑った。
「あー、まあ、うん。たくさんのリスナーさんに応援してもらってます!」
頬を赤らめて目を細める零さん。はらりと落ちてきた横髪を耳に掛ける動作。彼女の一挙一動にさえ意識が向けられ、目が離せない。
あの青く光を帯びたその右目に吸い寄せられる。
其れはどうしようもない程美しかった。
此処は武装探偵社の社内。テーブルに置かれた紅茶の入ったティーカップを手に取り、彼女は云う。
月無 零。そう名乗った彼女を連れ、僕達は零さんを探偵社まで案内した。つい先程のことだ。
「予約時間が過ぎていたのでめちゃめちゃ焦りましたよー、本当に有り難うございました。えーっと…」
「彼の名前は中島敦。そして私は太宰治です。美しい方、どうか私と心中を…」
「この唐変木! いい加減にしろ!」
ソファーに座っている零さんの手を取り心中へ誘う太宰さん。相変わらずぶれないなあ、なんて思う間もなく国木田さんによって太宰さんは奥へと引き摺られていった。
見慣れた光景と云われればそうなのだが、一つ違うとすれば今しがた心中に誘われた人が人間離れした美しさを持っていることだろう。
「ちょっとナオミ、良くないッてそういうのは……!」
「あらー?昨日あんなことを云っていたのは兄様の方……」
「で、でも御客さんも来る時間だし……」
そう云いながら探偵社の扉を開けたのは谷崎さんとその妹、ナオミさん。下にある喫茶店「うずまき」へ御茶をしに行っていたようで、ふんわりと珈琲の香りが漂ってくる。
何時ものようにお二人の兄妹仲の良さに感心していたのだが、何故か二人がいきなり動きを止めた。
目線の先に有るのは金髪のツインテール。
「……れ、零ちゃん!?」
「今日の依頼者って零ちゃんでしたの!?」
驚愕の顔を浮かべ動揺する谷崎さんとナオミさん。その様子に思わず僕は聞いてしまった。
「お二人ともそんなに驚いて……どうしたんです?」
「どうもこうもないよ! あの天才アイドル歌い手の零ちゃんだよ、敦くん知らないの!?」
やや興奮した風に谷崎さんにそう云われ、携帯電話の画面を見せてもらう。動画サイトの一頁、一チャンネルの画面。其処に表示されていたのは……
「チャンネル登録者……五百万人!?」
殆ど叫ぶようにそう云うと、其のチャンネルの持ち主である人物は少し照れたように笑った。
「あー、まあ、うん。たくさんのリスナーさんに応援してもらってます!」
頬を赤らめて目を細める零さん。はらりと落ちてきた横髪を耳に掛ける動作。彼女の一挙一動にさえ意識が向けられ、目が離せない。
あの青く光を帯びたその右目に吸い寄せられる。
其れはどうしようもない程美しかった。