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壱 月の顕現

「敦くん。今日も元気に仕事しようね!」
「え?は、はい……?」

 国木田さんに頼まれ、太宰さんと一緒にヨコハマの見回りをしている最中。太宰さんはいつも通り、フラフラと何処かへ行ってしまうものだと思っていたのだが、そうでも無かったらしい。笑顔で地面を踏み歩いている。
 ……調子狂うな。幾ら見回りとはいえ、一種の仕事だ。太宰さんが仕事に前向きな様子を見たことがあまり無いから、変な感じがする。
 軽い雑談を交わしながら、太宰さんと並んでヨコハマを歩く。……うーん、やっぱり違和感だ。

「あれ、この辺だと思うんだけどな……」

 白のキャップを被った一人の女性が、先程の台詞を発した。何やら困っているようで、キョロキョロと辺りを見回している。

「あの、どうかしましたか?」

 僕は其の女性に声をかけた。その言葉に顔を上げる女性。
 キャップの奥から顔が見える。僕は思わず息を呑んだ。

 シャープなのに何処か丸い輪郭。
 スッと通った鼻筋。
 格好の良い唇。
 何より、彼女の持つ目が美しかった。
 僕から見て左側の目は黄色。右側は青色。それだけでも充分驚いたのだが、青い其の瞳は、妙に輝いていて、目が離せない。
 夜空に一際強く光を発する一等星。後ろにいた太宰さんも、彼女から目線を動かさない。

「えーっと……あの?」
「あ、ああ! すみません……」

 少し照れたように笑う彼女に、僕はそう言って頭を下げる。じっと見すぎてしまった。

「其処の美しいお嬢さん。良ければ私と心中を……」
「すみませんちょっと無理です」

 即答で断られた太宰さんがガックリしているのを尻目に、僕は彼女へ向き直る。

「ところで、どうかしましたか?先程から何かを探しているようだったので……」
「あー、それですね! 実は、ちょっと道に迷っていまして」

 思い出したかのように笑い、眉を下げて困り顔をしたまま、目の前の女性は言った。

「武装探偵社って、何処にあります?」
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