壱 月の顕現
「ふーむ……」
「フィッツジェラルド様、どうかされましたか?」
組合が崩壊し、新生組合として再編してから数週間。彼のものとなった会社の高層フロアで、フィッツジェラルド様は革張りのソファに腰掛け足を組みながら、何やら携帯電話の画面をじっと見つめておられました。
「いや、最近どうにも気になる女がいてな」
「え…あ、あの奥様一筋のフィッツジェラルド様に好きな方が!?」
「違う、そうではなくてな。とりあえずその陶器を置いたらどうだ、オルコット君」
フィッツジェラルド様からあまりにも衝撃的な発言が飛び出したので、珈琲の入った茶器を落としてしまうところでした。
フィッツジェラルド様の前にあるテーブルへ珈琲杯を置くと、彼は私に携帯電話の画面を見せてくださいました。
「えっと……この方は一体……」
「何だったか、ツキムレイ、と言うらしいぞ」
〈月〉でつき、〈無〉でむ、〈零〉でれい、と読むそうです。
随分と特殊な読み方をするようですが、おそらく本名は別にあるのでしょう。フィッツジェラルド様の見せてくださった画面によると、どうやらこの方は“歌い手”という存在のようです。
画面に映っているのは、イラストで描かれた女性でした。金髪ツインテールでオッドアイの女性です。
私はそちらの方面に詳しくありませんが、どうやら人気があるらしく、再生回数もコメント数も他の方と比較して群を抜いています。
「この方のどのような部分が気になるのです?」
「妙な噂を聴いた」
「噂…ですか」
フィッツジェラルド様は”神の目”によって情報をいち早く得ることができますが、一介の女性に、しかも噂話を根拠にするのは驚きでした。
彼はそう言って、視線を携帯電話の画面から窓の向こうへと移しました。ヨコハマの青空が広がるその景色は迚美しいものです。
「ああ。異能特務課を買うにあたって有効かもしれないとなれば、このオレが調査しておく必要があるだろう?」
そう言って、私に、いつもの白い歯を見せた挑戦的な笑みを彼は向けます。
「ところで、この女の名前は何といったか。ツキミ?ツキリ…」
「月無零、です…」
「フィッツジェラルド様、どうかされましたか?」
組合が崩壊し、新生組合として再編してから数週間。彼のものとなった会社の高層フロアで、フィッツジェラルド様は革張りのソファに腰掛け足を組みながら、何やら携帯電話の画面をじっと見つめておられました。
「いや、最近どうにも気になる女がいてな」
「え…あ、あの奥様一筋のフィッツジェラルド様に好きな方が!?」
「違う、そうではなくてな。とりあえずその陶器を置いたらどうだ、オルコット君」
フィッツジェラルド様からあまりにも衝撃的な発言が飛び出したので、珈琲の入った茶器を落としてしまうところでした。
フィッツジェラルド様の前にあるテーブルへ珈琲杯を置くと、彼は私に携帯電話の画面を見せてくださいました。
「えっと……この方は一体……」
「何だったか、ツキムレイ、と言うらしいぞ」
〈月〉でつき、〈無〉でむ、〈零〉でれい、と読むそうです。
随分と特殊な読み方をするようですが、おそらく本名は別にあるのでしょう。フィッツジェラルド様の見せてくださった画面によると、どうやらこの方は“歌い手”という存在のようです。
画面に映っているのは、イラストで描かれた女性でした。金髪ツインテールでオッドアイの女性です。
私はそちらの方面に詳しくありませんが、どうやら人気があるらしく、再生回数もコメント数も他の方と比較して群を抜いています。
「この方のどのような部分が気になるのです?」
「妙な噂を聴いた」
「噂…ですか」
フィッツジェラルド様は”神の目”によって情報をいち早く得ることができますが、一介の女性に、しかも噂話を根拠にするのは驚きでした。
彼はそう言って、視線を携帯電話の画面から窓の向こうへと移しました。ヨコハマの青空が広がるその景色は迚美しいものです。
「ああ。異能特務課を買うにあたって有効かもしれないとなれば、このオレが調査しておく必要があるだろう?」
そう言って、私に、いつもの白い歯を見せた挑戦的な笑みを彼は向けます。
「ところで、この女の名前は何といったか。ツキミ?ツキリ…」
「月無零、です…」