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プロローグ

「次元さん?!」


少女はあれから一度だけ彼らを見かけたことがある。


少女が学校帰りに友達と街を歩いていると、彼らを乗せたフィアットとサイレンを響かせながらフィアットを追いかけるパトカーが横切ったのだ。


少女は振り返るが、フィアットを運転していて黒い帽子とスーツを身にまとっている男は彼女に気づきもしなかった。


ーー自分はもう彼にとって過去の人物なのだ。


「千世(ちよ)?」


少女は友達に腕を引かれながらも、遠ざかっていくフィアットをじっと見つめることしかできなかった。


彼の後ろ姿を見て胸がはちきれそうな気持ちになる少女。


なぜか少女の目からは涙が溢れ出てくる。



そんな少女を見て、彼女の友人は眉間に皺を寄せ首を傾げた。


頭の中で彼たちに出会ったときのことが浮かび上がってくる。



最初は、自分の父親の形見を奪おうとするただの犯罪者たちだと思っていた。



‘‘俺はもう、お前さんみたいに綺麗な心を持っていねえからな"



だが、彼らのおかげで自分は父親離れできたし変われたのだと思える。




もう二度と彼らには会えないということが、少女もなんとなくわかっていた。





彼らと自分の住む世界は違う。



彼は誰よりも危ない世界に、明日生きているかもわからない世界にいるのだ。





きっとまだ知りたくなかったこの気持ちは……。

彼がきっと自分の……。






……これは少女の生き方を変えるきっかけになり、そして誰よりも自由人である泥棒たちの話。
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