てにす
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年に一度の日だからと、今日ばかりは俺もこいつが喜ぶようなことをしてやろうと思っていた。その証拠に明日も仕事だっていうのに(まあこれはお互い様だが)うちに泊まりに来てもいいぞと連絡をいれ、以前ひどく気に入った様子だったプディングを冷蔵庫に冷やしておき、仕事帰りのスーツのままという色気のない格好ではあったが駅で待ち合わせをしてディナーでもとエスコートしたのだ。そのうえ部屋についてからは誕生日のプレゼントとして先日一緒に買い物にいったときにほしいとつぶやいていた美顔器を贈ってやったというのに、この女はそれでも足りないらしい。
「今日の間だけでいいからわたしのことお姫様扱いして」
「アン?」
「だめ?」
「なんだよお姫様扱いって」
「それは景吾が考えて!お姫様扱いなのにわたしに聞いたらおかしいでしょ」
よくわからない理屈を並べて本日のお姫様は飲み終えたティーカップとプディングを食った皿を手際よく洗い、そのまま風呂場へと消えていった。
お姫様扱い?なんだそりゃ。いい歳した女が(しかも今日さらに年齢を重ねたというのに)言う言葉か?回る疑問をよそに、直接被害を被っていない俺はあまり考えず手近の雑誌に視線をおとす。……そういや次の会議、まだつめきってねえところがあったっけな。まだ日はある。が、気付いたからには今まとめてしまったほうが気が楽だ。そう判断し雑誌からパソコンへ手を伸ばそうとしたとき。バスルームのドアが小さくきしんだ。
「景吾ーでたよー?」
「ああ」
「ああじゃなくて!」
「俺はあとでいい」
「そうじゃなくて!」
「なんだよ」
「髪かわかして」
……………一瞬時間がとまった。このバカ今なんていった?髪を?乾かしてだと?
「自分でやれよ」
「さっき約束したじゃない!」
あの約束はこうして俺を縛るのか。というか約束などしていない。一方的に要求して一方的に納得しただけだ。と言ったところでこいつの口は閉じることはないだろう。いい加減その程度のことを知るくらいには付き合いを深めている。
「来い」
反論は無駄だと理解し、ソファの前に言葉一つで座らせる。ケツにしっぽでもついてんのかと錯覚するほどうれしそうな顔をして、お姫様は庶民らしく床に直接座り込んだ。俺からの奉仕を待っている濡れた髪に乾いたタオルをかぶせ、かきまぜた。少なからず胸に湧いたいらだちをこめてバカが騒ぎださない程度に乱暴に。ドライヤーをかけ仕上げに髪をとかしてやり、ここまでやれば満足だろう。ぞんざいにブラシを放り投げた。
「疲れた」
「景吾どこいくの」
「あ?先に風呂だ、そのあと仕事するからお前寝てろよ」
「え、待って待って」
んだよ。次はどんな要求をするつもりだ。あんまり調子に乗ってると本気で叱り飛ばすぞこの野郎。眉間にしわを刻みそんな感情を存分にこめてバカを見下ろすと、いい加減俺のそんな態度にはなれているらしいこいつは悪びれる様子もなくいった。
「わたしが寝るまで一緒にいて?」
返事を待たず電気を消すとベッドに潜り込み布団の端に寄り枕を小さくたたいて俺を呼ぶ。……こいつのわがままに付き合うのは面倒くせえが、なるほどそれは魅力的な誘いだ。誘われるままに布団に入り背中に腕をまわすとやわらかく抱きしめた。緩んだ頬にキスを落とす。とろけそうな笑顔で喜ぶお姫様の髪からは普段とは違って俺とおなじシャンプーの香りがふわりとたちあがる。それだけのことでゾクリと尾てい骨のあたりから背中にかけて快感が走った。自覚はなかったがわりと俺もお姫様プレイに酔っていたのか?この程度で妙に興奮するとは。
「景吾だーいすき」
「ああ」
「うれしいな、本当に寝るまで一緒にいてね?」
「つーかお前セックスしてえならさっさと言えよ」
唇を重ねて、歯列をなぞる。お姫様扱いをご所望とのことなのでできるだけ丁寧に。お気に入りらしいピンク色のルームウェアごしに背中のホックをパチリとこれまたいつもよりもやさしくはずすと、一瞬離れた唇の隙間から名前を呼ばれた。
「まってまって、ねえ、景吾」
「ん?」
「わ、わたしべつにしたいなんていってないよ」
「アーン?一緒に寝てってそういうことだろ」
「一緒に寝てじゃなくて一緒にいてっていったの!」
「同じだろ」
「違うよ!景吾仕事で大変だろうからそんな無理してもらおうとはおもってないよ」
別に無理じゃねーけど。セックスごときで疲労困憊するほど俺もまだ年老いちゃいねーよ。思いながらお姫様の言葉を待つ。
「ただね、景吾に思いっきり甘えたいなって思っただけなの」
「へえ」
「だからするとかじゃなくて今日くらいは寝るまでずっと手つないでてほしいなってね、思っただけなんだけど」
「なるほど」
「だからね?仕事あるんでしょ?いいよ無理しなくて、本当に寝るまで一緒にいてくれたらそれで嬉しいから」
「お前俺とするの嫌い?」
「きらいじゃないようれしいよ」
「そう」
曖昧に返事を返すとキスに戻った。今度は俺のやりたいように、丁寧とはお世辞にも言えない舌の動かし方で。たまに唇なんて噛んだりしながら。女らしくやわらかな脇腹なんてまさぐりながら。お姫様はそれでも一瞬の隙をついて言葉を紡ぐ。
「っちょ、景吾!仕事あるんでしょ!?」
「別に今日中にやんなきゃいけねえもんでもねえよ」
「でもつかれてるのに!」
「それ以上にその気になったものをおあずけさせられるほうがきついぜ?」
「わっわたしきょうお姫様なのに!」
「残念。時計みてみろよ」
0:04。すでにお姫様タイムは終了しているのだ。こいつははじめに言ったはずだ、今日の間だけでいいから、と。お姫様ではなくなったのなら遠慮は必要ない。従者が姫に手をだしてはいけないのだと自らを律する必要もなくなったわけだ。まあそんなもんはじめっからしちゃいねーが。自分の体を動きまわる俺の手にとうとう観念したのか抵抗しなくなった可愛いバカを確認して、頭の端で小さく思う。色気のないものをプレゼントしたぶん、今度なんでもない日に指輪でも贈ってやろう。誕生日になんとなくわたされるよりも、きっとずっと嬉しいはずだ。高く甘い声にかき消された思いつきは、明日の朝にはすでに消えているかもしれないが。まあそのうち思い出すさ。俺はこうみえて、案外こいつを溺愛している。
「今日の間だけでいいからわたしのことお姫様扱いして」
「アン?」
「だめ?」
「なんだよお姫様扱いって」
「それは景吾が考えて!お姫様扱いなのにわたしに聞いたらおかしいでしょ」
よくわからない理屈を並べて本日のお姫様は飲み終えたティーカップとプディングを食った皿を手際よく洗い、そのまま風呂場へと消えていった。
お姫様扱い?なんだそりゃ。いい歳した女が(しかも今日さらに年齢を重ねたというのに)言う言葉か?回る疑問をよそに、直接被害を被っていない俺はあまり考えず手近の雑誌に視線をおとす。……そういや次の会議、まだつめきってねえところがあったっけな。まだ日はある。が、気付いたからには今まとめてしまったほうが気が楽だ。そう判断し雑誌からパソコンへ手を伸ばそうとしたとき。バスルームのドアが小さくきしんだ。
「景吾ーでたよー?」
「ああ」
「ああじゃなくて!」
「俺はあとでいい」
「そうじゃなくて!」
「なんだよ」
「髪かわかして」
……………一瞬時間がとまった。このバカ今なんていった?髪を?乾かしてだと?
「自分でやれよ」
「さっき約束したじゃない!」
あの約束はこうして俺を縛るのか。というか約束などしていない。一方的に要求して一方的に納得しただけだ。と言ったところでこいつの口は閉じることはないだろう。いい加減その程度のことを知るくらいには付き合いを深めている。
「来い」
反論は無駄だと理解し、ソファの前に言葉一つで座らせる。ケツにしっぽでもついてんのかと錯覚するほどうれしそうな顔をして、お姫様は庶民らしく床に直接座り込んだ。俺からの奉仕を待っている濡れた髪に乾いたタオルをかぶせ、かきまぜた。少なからず胸に湧いたいらだちをこめてバカが騒ぎださない程度に乱暴に。ドライヤーをかけ仕上げに髪をとかしてやり、ここまでやれば満足だろう。ぞんざいにブラシを放り投げた。
「疲れた」
「景吾どこいくの」
「あ?先に風呂だ、そのあと仕事するからお前寝てろよ」
「え、待って待って」
んだよ。次はどんな要求をするつもりだ。あんまり調子に乗ってると本気で叱り飛ばすぞこの野郎。眉間にしわを刻みそんな感情を存分にこめてバカを見下ろすと、いい加減俺のそんな態度にはなれているらしいこいつは悪びれる様子もなくいった。
「わたしが寝るまで一緒にいて?」
返事を待たず電気を消すとベッドに潜り込み布団の端に寄り枕を小さくたたいて俺を呼ぶ。……こいつのわがままに付き合うのは面倒くせえが、なるほどそれは魅力的な誘いだ。誘われるままに布団に入り背中に腕をまわすとやわらかく抱きしめた。緩んだ頬にキスを落とす。とろけそうな笑顔で喜ぶお姫様の髪からは普段とは違って俺とおなじシャンプーの香りがふわりとたちあがる。それだけのことでゾクリと尾てい骨のあたりから背中にかけて快感が走った。自覚はなかったがわりと俺もお姫様プレイに酔っていたのか?この程度で妙に興奮するとは。
「景吾だーいすき」
「ああ」
「うれしいな、本当に寝るまで一緒にいてね?」
「つーかお前セックスしてえならさっさと言えよ」
唇を重ねて、歯列をなぞる。お姫様扱いをご所望とのことなのでできるだけ丁寧に。お気に入りらしいピンク色のルームウェアごしに背中のホックをパチリとこれまたいつもよりもやさしくはずすと、一瞬離れた唇の隙間から名前を呼ばれた。
「まってまって、ねえ、景吾」
「ん?」
「わ、わたしべつにしたいなんていってないよ」
「アーン?一緒に寝てってそういうことだろ」
「一緒に寝てじゃなくて一緒にいてっていったの!」
「同じだろ」
「違うよ!景吾仕事で大変だろうからそんな無理してもらおうとはおもってないよ」
別に無理じゃねーけど。セックスごときで疲労困憊するほど俺もまだ年老いちゃいねーよ。思いながらお姫様の言葉を待つ。
「ただね、景吾に思いっきり甘えたいなって思っただけなの」
「へえ」
「だからするとかじゃなくて今日くらいは寝るまでずっと手つないでてほしいなってね、思っただけなんだけど」
「なるほど」
「だからね?仕事あるんでしょ?いいよ無理しなくて、本当に寝るまで一緒にいてくれたらそれで嬉しいから」
「お前俺とするの嫌い?」
「きらいじゃないようれしいよ」
「そう」
曖昧に返事を返すとキスに戻った。今度は俺のやりたいように、丁寧とはお世辞にも言えない舌の動かし方で。たまに唇なんて噛んだりしながら。女らしくやわらかな脇腹なんてまさぐりながら。お姫様はそれでも一瞬の隙をついて言葉を紡ぐ。
「っちょ、景吾!仕事あるんでしょ!?」
「別に今日中にやんなきゃいけねえもんでもねえよ」
「でもつかれてるのに!」
「それ以上にその気になったものをおあずけさせられるほうがきついぜ?」
「わっわたしきょうお姫様なのに!」
「残念。時計みてみろよ」
0:04。すでにお姫様タイムは終了しているのだ。こいつははじめに言ったはずだ、今日の間だけでいいから、と。お姫様ではなくなったのなら遠慮は必要ない。従者が姫に手をだしてはいけないのだと自らを律する必要もなくなったわけだ。まあそんなもんはじめっからしちゃいねーが。自分の体を動きまわる俺の手にとうとう観念したのか抵抗しなくなった可愛いバカを確認して、頭の端で小さく思う。色気のないものをプレゼントしたぶん、今度なんでもない日に指輪でも贈ってやろう。誕生日になんとなくわたされるよりも、きっとずっと嬉しいはずだ。高く甘い声にかき消された思いつきは、明日の朝にはすでに消えているかもしれないが。まあそのうち思い出すさ。俺はこうみえて、案外こいつを溺愛している。
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