肉食系女子
オレの名は、うちはオビト。
将来火影になる夢を持つ、十三歳の忍ボーイだ。
オレは今、同じ班ののはらリンに恋をしている。初恋だ。しかし、上手くいかないのが初恋。リンが恋しているのは、オレではなかった。あろう事か、これまた同じ班である別名スカシ野郎、はたけカカシだったのだ。
カカシは忍として、群を抜いて実力がある、らしい。口布で隠している顔は、めちゃくちゃイケメン、らしい。だからリン以外の女の子にも、超モテる、らしい。
オレから見たら、カカシなんて全然たいしたこと事ないけどね!
オレだって実力あるし!(写輪眼が開眼すれば)
顔だってイケてる方だし!!(ベビーフェイスは年上にモテる)……と思う。思いたい。
とにかく、カカシはムカつく男なのだ。
言っておくが、ヤツが女の子にモテるからとか、そんな個人的な感情でムカついているワケでは、断じてない。
そんなスカシ野郎カカシに、リンは健気にモーションをかけているのだが、いかんせんバカカシは華麗にスルーなのだ。
オレとしては二人がくっついてしまったら困るから、それはそれで都合が良いのだけど、悲しそうなリンの顔を見るのは正直辛い。
ちょっとはリンの気持ちに応えてやれよ! そんな風に思い始めた頃……事件は起きた。
「カカシ、いい加減にしてよね!!」
普段のリンからは、とても想像出来ない大きな声。
いつものように、カカシに控え目にアプローチしているなと思っていたのだが、今日は様子が違った。
「どうしてそんな態度なの?!」
カカシは突然の出来事で、言葉が出ないようだった。驚き、普段は眠たそうな目を丸く見開いていた。
「女の子が勇気を出して誘っているのよ? それなのに毎回毎回、冷たくあしらって! そんなクールなカカシが好きだけど!」
「オ、オレは……別に冷たくは」
「冷たくないって言うの? 前に手作りしたから家に食べに来てって私が誘ったら、カカシなんて言ったか覚えてる? 自分で作るからいいって言ったのよ。よくも女の子のプライドをポッキリ折ってくれたわよね。ええ、そうでしょうよ。確かにカカシは料理上手よ。カカシんちで食べさせてもらった魚料理なんて、プロと見間違うほど味も盛り付けも最高だったわ。掃除も完璧にこなすし、女子より女子力高い男子よね! はっきり言って女の敵よ! そんな家庭的なカカシが大好き!」
ちょくちょく心の声が漏れて、ディスってるのか愛の告白してるのか、よく分からないリンになっていた。
「あのさ、リン……怒ってるの?」
「はあ? 怒ってるですって? そうね、怒っているわよ。そんな上目遣いで見つめられたら私の理性がふっ飛んじゃうでしょ! 困った顔も可愛いなぁもう!!」
カカシはリンの迫力に完全に飲まれてしまい、オロオロするばかりだ。あの天才忍者が、なんとも哀れな姿をさらしている。
その時、目尻に涙を浮かべたカカシがこちらに顔を向けた。どうやらオレに助けを求めているようだ。
別にカカシがどうなろうと知ったこっちゃない。……だが、同じ男としてちょっと可哀想になった。
それに、カカシがリンの誘いに乗らないのは、ひょっとしたら、オレの恋心を知っているからかも、と思わ無くもなくもなく、も無く……ん?
まあ何にせよ、優しいオレは助け舟を出すことにした。
「えっと、リン」
「オビトは黙ってて」
地の底に響くような低い声。氷のような冷たい眼差し。
撃沈。
ここでオレは、生徒間の問題だからかなのか、少し離れたところで息を潜めていたミナト先生にようやく気付く。
そんな所に隠れていないで助けてよっ、とオレはカカシと同じくちょっと潤んでしまった瞳を先生に向けジェスチャーで訴えた。
眉をハの字にした先生は人差し指で自分を示し、オレが?? 的な表情を浮かべる。オレは無言で大きく頷いた。
先生は咳払いをひとつし、オレ達に歩み寄った。
ヨシ、いけ、黄色い閃光。男の威厳を見せてやれ!
「リ、リン。ほらカカシが困っているよ。というか、もう泣いているよね。リンは優しい子でしょ。怒った顔は似合わないよ。ほら、笑って笑って」
何となく声が上擦っている。
それに反し、リンは落ち着いていた。
「ミナト先生。お言葉ですが、女の子は少しばかり押しが強い方がいいんです。先生も心当たりがおありでしょ?」
リンは微笑する。何だ、その大人びた表情は! 本当にリンなのか??
「私、恋の特訓を受けて生まれ変わったんです。昨日までの慎ましいリンは卒業しました。これからは自分の気持ちに正直にグイグイ攻めていきます。私に恋愛をご教授くださった先生、どなたか分かります? ミナト先生が良くご存知の女性ですよ。そう、クシナさんです。うふふ」
ミナト先生の顔に表情は無かった。クシナさんの名に、先生は微動だにできなくなる。
おい、どーした! たいした事ねーなぁ黄色い閃光!!
「と、言うことで、今日こそは私に付き合ってもらうからね、カ・カ・シ♡ さ、行こ」
顔面蒼白になったカカシの腕に、リンはベッタリと抱きついた。
すまん、カカシ。オレたち二人に、クシナさんの息のかかったリンを止めることは不可能だ……。
助けて~のか細い声と共に、カカシはズルズルと引きずられて行く。
「ねえ、ミナト先生……カカシって」
「うん、多分……喰われちゃう、かな」
「先生もクシナさんに?」
「……ノーコメント」
カカシの声がどんどん遠ざかっていく。
うちはオビト。
将来火影になる夢を持ち、好きな女の子の幸せを願う、13歳……。
終わり
将来火影になる夢を持つ、十三歳の忍ボーイだ。
オレは今、同じ班ののはらリンに恋をしている。初恋だ。しかし、上手くいかないのが初恋。リンが恋しているのは、オレではなかった。あろう事か、これまた同じ班である別名スカシ野郎、はたけカカシだったのだ。
カカシは忍として、群を抜いて実力がある、らしい。口布で隠している顔は、めちゃくちゃイケメン、らしい。だからリン以外の女の子にも、超モテる、らしい。
オレから見たら、カカシなんて全然たいしたこと事ないけどね!
オレだって実力あるし!(写輪眼が開眼すれば)
顔だってイケてる方だし!!(ベビーフェイスは年上にモテる)……と思う。思いたい。
とにかく、カカシはムカつく男なのだ。
言っておくが、ヤツが女の子にモテるからとか、そんな個人的な感情でムカついているワケでは、断じてない。
そんなスカシ野郎カカシに、リンは健気にモーションをかけているのだが、いかんせんバカカシは華麗にスルーなのだ。
オレとしては二人がくっついてしまったら困るから、それはそれで都合が良いのだけど、悲しそうなリンの顔を見るのは正直辛い。
ちょっとはリンの気持ちに応えてやれよ! そんな風に思い始めた頃……事件は起きた。
「カカシ、いい加減にしてよね!!」
普段のリンからは、とても想像出来ない大きな声。
いつものように、カカシに控え目にアプローチしているなと思っていたのだが、今日は様子が違った。
「どうしてそんな態度なの?!」
カカシは突然の出来事で、言葉が出ないようだった。驚き、普段は眠たそうな目を丸く見開いていた。
「女の子が勇気を出して誘っているのよ? それなのに毎回毎回、冷たくあしらって! そんなクールなカカシが好きだけど!」
「オ、オレは……別に冷たくは」
「冷たくないって言うの? 前に手作りしたから家に食べに来てって私が誘ったら、カカシなんて言ったか覚えてる? 自分で作るからいいって言ったのよ。よくも女の子のプライドをポッキリ折ってくれたわよね。ええ、そうでしょうよ。確かにカカシは料理上手よ。カカシんちで食べさせてもらった魚料理なんて、プロと見間違うほど味も盛り付けも最高だったわ。掃除も完璧にこなすし、女子より女子力高い男子よね! はっきり言って女の敵よ! そんな家庭的なカカシが大好き!」
ちょくちょく心の声が漏れて、ディスってるのか愛の告白してるのか、よく分からないリンになっていた。
「あのさ、リン……怒ってるの?」
「はあ? 怒ってるですって? そうね、怒っているわよ。そんな上目遣いで見つめられたら私の理性がふっ飛んじゃうでしょ! 困った顔も可愛いなぁもう!!」
カカシはリンの迫力に完全に飲まれてしまい、オロオロするばかりだ。あの天才忍者が、なんとも哀れな姿をさらしている。
その時、目尻に涙を浮かべたカカシがこちらに顔を向けた。どうやらオレに助けを求めているようだ。
別にカカシがどうなろうと知ったこっちゃない。……だが、同じ男としてちょっと可哀想になった。
それに、カカシがリンの誘いに乗らないのは、ひょっとしたら、オレの恋心を知っているからかも、と思わ無くもなくもなく、も無く……ん?
まあ何にせよ、優しいオレは助け舟を出すことにした。
「えっと、リン」
「オビトは黙ってて」
地の底に響くような低い声。氷のような冷たい眼差し。
撃沈。
ここでオレは、生徒間の問題だからかなのか、少し離れたところで息を潜めていたミナト先生にようやく気付く。
そんな所に隠れていないで助けてよっ、とオレはカカシと同じくちょっと潤んでしまった瞳を先生に向けジェスチャーで訴えた。
眉をハの字にした先生は人差し指で自分を示し、オレが?? 的な表情を浮かべる。オレは無言で大きく頷いた。
先生は咳払いをひとつし、オレ達に歩み寄った。
ヨシ、いけ、黄色い閃光。男の威厳を見せてやれ!
「リ、リン。ほらカカシが困っているよ。というか、もう泣いているよね。リンは優しい子でしょ。怒った顔は似合わないよ。ほら、笑って笑って」
何となく声が上擦っている。
それに反し、リンは落ち着いていた。
「ミナト先生。お言葉ですが、女の子は少しばかり押しが強い方がいいんです。先生も心当たりがおありでしょ?」
リンは微笑する。何だ、その大人びた表情は! 本当にリンなのか??
「私、恋の特訓を受けて生まれ変わったんです。昨日までの慎ましいリンは卒業しました。これからは自分の気持ちに正直にグイグイ攻めていきます。私に恋愛をご教授くださった先生、どなたか分かります? ミナト先生が良くご存知の女性ですよ。そう、クシナさんです。うふふ」
ミナト先生の顔に表情は無かった。クシナさんの名に、先生は微動だにできなくなる。
おい、どーした! たいした事ねーなぁ黄色い閃光!!
「と、言うことで、今日こそは私に付き合ってもらうからね、カ・カ・シ♡ さ、行こ」
顔面蒼白になったカカシの腕に、リンはベッタリと抱きついた。
すまん、カカシ。オレたち二人に、クシナさんの息のかかったリンを止めることは不可能だ……。
助けて~のか細い声と共に、カカシはズルズルと引きずられて行く。
「ねえ、ミナト先生……カカシって」
「うん、多分……喰われちゃう、かな」
「先生もクシナさんに?」
「……ノーコメント」
カカシの声がどんどん遠ざかっていく。
うちはオビト。
将来火影になる夢を持ち、好きな女の子の幸せを願う、13歳……。
終わり
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