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歯医者×虫歯菌

「働いてて思うんだが」

「お、なになに?」
歯医者と虫歯菌は同じソファに座っており、歯医者の唐突なつぶやきに虫歯菌は反応しもたれ掛かる。

「この街の人ってなんだか虫歯が多いような気がするんだが」

「ん?ああ、俺のボスが目ぇつけてるからな〜俺の同僚とか後輩とか先輩とか、なんならボスもここ住んでて虫歯促進してるんだぜ」

「そうだったのか!?」
歯医者は、今まで心の奥に引っかかっていたこそばゆい疑問を一気にひっくり返された心地になって驚愕し、普段は出さないような大きな声を出してしまう。

「この街の色んなところに俺らの手ぇかかってんだぜ。お菓子会社とか……」

「待て、いつ頃から……そういうのしてるんだ?」
あいまいな疑問が口をつく。次々に知らないことが彼の成熟した脳みそへと届いて息を着く暇もない

「大分前からだよ。お前が生まれた時にはもうやってるし」
歯医者はもう質問し返すことも出来ず落ち着いて息を吐く。そして呆れたように虫歯菌に目をやる

「そうか……で、お前は言って良かったのか?歯医者に」

「あ……」
すると虫歯菌は顔面蒼白といった様子で固まり、目をそらす。

「いやぁ、ま、俺らのボスは寛容だから……寛容な部署だから。」

「部署」
歯医者はまるで彼が人間のような言葉を使うので思わず反復してしまう。

「えーっとだから、その……ボスのとこ見かけても殺すなよ?」

「……家に虫歯菌飼ってる時点で今更だ」
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