【LOVE】☆HOTELエーゲ海遊戯☆

3


むかしむかし、あるところに、
『HOTEL エーゲ海』で、
ご休憩中(3時間 / 6900円)の、
兎さんと狼さんが、いました。

1回戦は、回転ベッドの上で、
2回戦は、紺碧のプールで、
3回戦は、虹色のお風呂で、した後、

狼さんは、
あんごら より、ファービュラスで、
ねざーらんどどわーふ より、ドリーミングで、
はーれーくいーん より コケティッシュな、
兎さんのことを、ドライヤーで乾かしてあげながら、
言いました。

「……~~~でな」

「え?」

「……~~~てなことが、あってな」

「え??」

「……~~~だから、ゆうてやったわ!

『つぶあん と こしあん の見分け方かッ』ってなッ!
ヤツ、
『うぐいすあん ですけど?』
みたいな顔、しよったわ!

あーはははは!」

「聞こえないのよっ」

ドライヤーのコンセントを、
プラグから引き抜いて、兎さんが言いました。

「ドライヤー中に話しかけられても」

兎さんは、言いました。

「生きてりゃわかるでしょ」

兎さんは、呆れた顔で言いました。

「新人美容師じゃないんだから」

兎さんは、呆れた声で言いました。

「たまに、ベテラン美容師でも、おるよな。
ドライヤー中に、話しかけてくるヤツ」

「あはは。いるいる~!」

「なッ!おるよなっ!」

「あと、シャンプー中に、話しかけてくる美容師も。聞こえないのよ、水音で」

「あはは。おるなっ!」

「ねっ!いるわよね!
この間なんて、シャンプー中に、目隠しされた状態で、
やたらと話しかけてくる美容師がいるから、
無視するのも悪いじゃない?
適当に、返事したり、相槌打ったりして、会話してたら、
それが、隣のシャンプー台にいる
お客サンと美容師さんの会話だったの!
そんな時だけ、なに、無言、つらぬいてっ、
シャンプーに専念してンのよッ!?
あたしの担当の美容師はっ!?
恥かいちゃったわよ。ホントに、もぉ」

「あはは。あるなァ!
あと、
『おかゆいとこ、ございませんか~』て、訊かれて、
つむじの~、右っ側の、上ンとこの~、
左の~、下らへんがかゆいんやけど、
うまく説明できひんから、
『大丈夫です~』、ゆうて、
自分でかいてまう時、あるよなっ!あるある~!」

「ないわよっ!あんただけよっ!」


ドライヤーの、コンセントのプラグを、さし直す兎さん。

ドライヤーの風を、温風から、冷風に切り替えて、
再び、兎さんのことを、乾かしてあげながら、
狼さんは、思いました。


(顔が美形なヤツは、毛質も美形やな)

(たしか、三人兄妹で、
みんな、姿、形が、よう似よる、ゆうとったなぁ。
代々、美形な家系なんやろな。
そんな、道端三姉妹みたいで、見分け、つくんか?
声か!?ホクロか!?耳のカタチか!?
でも、まあ、同じ顔なら、問題ないか)

「どれが、アンジェリカでも。あーはははは!」

「それは、末っ子よっ!」

「聞こえとるやんッ!?」


狼さんに、乾かしてもらいながら、兎さんは、
ニンジン型のオモチャのことを、思い出していました。


(最初、『ウェルカムベジタブル』だと思ったけどぉ)

(『どうぞ、ご自由にお試しください(サンプル品)』って)

(アレ、『大人のオモチャ』よね。完全に)


狼さんに、乾かしてもらいながら、
未開封の、ニンジン型のオモチャが、気になる、兎さん。

(大人のオモチャ、使いたいなんて言ったら、傷つけるかしらぁ?)

狼さんに、乾かしてもらいながら、
未使用の、ニンジン型のオモチャが、気になる、兎さん。

(毎回、すっごい、頑張ってくれてるの、知ってるしぃ)

狼さんに、乾かしてもらいながら、
未経験の、ニンジン型のオモチャが、気になる、兎さん。

(『オレのテクニックじゃ、満足できんのかぁ!?』って、怒るかしらぁ?
『お前は、無類のニンジン好きかっ!?』って、怒るかしらぁ?)

未開封の、未使用の、未経験の、
ニンジン型のオモチャが、どうしても気になる、兎さん。

(でも、傷つけるコト、したくないしなぁ)


兎さんのことを乾かしながら、狼さんも、
ニンジン型のオモチャのことを、思い出していました。

(大人のオモチャ、使うてみたい、なんてゆうたら、嫌がるかぁ?)

兎さんのことを乾かしながら、
未開封の、ニンジン型のオモチャが、気になる、狼さん。

(『誰が、オモチャよッ!?』って、怒るかぁ?)

兎さんのことを乾かしながら、
未使用の、ニンジン型のオモチャが、気になる、狼さん。

(『オモチャ扱い、しないでちょーだいッ』ゆうて、怒るかぁ?)

兎さんのことを乾かしながら、
未経験の、ニンジン型のオモチャが、気になる、狼さん。

(でも、嫌がるコト、したないしなぁ)


狼さんは、ドライヤーのスイッチを、ONからOFFに、しました。

「ヘアーオイルつけるか?毛先に」

「え!?そーねぇ!?
クリーンカバー、つけようかしらぁ!?電マに」

「ゆうてへん、ゆうてへん」

ヘアーオイルを、適当に、手の平に取った、狼さん。

「コレ、ええ匂いやなぁ」

「スイーツ系のヘアーオイルよ」

「イチゴ味のラブローションかぁ」

「言ってない、言ってない」

「あ!?ちょっと、オイル、付けすぎてもうたわ」

「大丈夫よ。医療現場でも使われている
水溶性系ローションなら、ぬるま湯で、
さっと洗い流せるテクスチャーだから」

「ゆうてへん、ゆうてへん」

ドライヤーの音がなくなっても、
なにも聞き取れない、兎さんと狼さん。

「髪ゴム、取ってくれる?」

「え!?スキン、取ったら、アカンやろ!?」

「言ってない、言ってない。

フェイスパック、取ってもらえる?」

「アナルパールって、どれや?」

「言ってない、言ってない。

ボディクリーム、取って」

「ボディクリップって、どれやッ!?」

「言ってない、言ってない」

大人のオモチャのことで、頭がいっぱいの、兎さんと狼さん。

(でも、もう、帰る支度、しちゃったしなぁ)
(でも、もう、帰る支度、してもうたしなぁ)

でも、大人のオモチャのことで、頭がいっぱいの、兎さんと狼さん。


「ねえねえ」

「なんや?」

「なんでもない」

兎さんは、狼さんと、
ニンジン型のオモチャで遊びたいと、思っていました。

「なあなあ」

「なに?」

「なんでもあらへん」

狼さんも、兎さんと、
ニンジン型のオモチャで遊びたいと、思っていました。


「ねぇ」
「なぁ」

「大人のオモチャ、使ってみない?」
「大人のオモチャ、使うてみいひん?」


兎さんと狼さんが、同時に言うと同時に、
休憩時間、残り15分を告げる、
備え付けの電話が鳴りました。


「え、延長でぇ」


その後、ふたりは、時間いっぱいまで、
ニンジン型のオモチャ他で、遊びましたとさ。


めでたしめでたし


☆HOTELエーゲ海遊戯☆3 完
3/4ページ
    スキ