【LOVE】☆HOTELエーゲ海遊戯☆

2


むかしむかし、あるところに、
兎さんと狼さんが、いました。

『HOTEL エーゲ海』で、一回戦を終え、
流れっぱなしの えーぶい を見ながら、
狼さんは言いました。

「入れ乳やん」

「カラダが資本なんだから、お金かけて、当然でしょ」

兎さんが、ラブホに備え付けのカラオケの、
タッチパネルをタッチペンで操作しながら、
言いました。


(やっぱ、コイツの方が、美人やな)


狼さんは、ラブホに備え付けのカラオケの、
タッチパネルをタッチペンで操作している、
タレ目がちな大きな目と、
通った鼻筋と可愛らしい小鼻と、
イチゴのように赤い口と、 
ミルクのように白い肌の、
兎さんを見ながら、思いました。


(コイツのイキ顔のほーが、興奮するな。えーぶい嬢よか)


「なあなあ」

「なによぉ」

「お前も、どっか、いじっとンのか!?
作りモンみたいな、顔、しとるもんなァ!?
お前も、どっか、金、かけてンのか!?」

「なに、歌おっかな、一曲目」

「やっぱ、その目かぁ!?鼻かぁ!?
あっ!口かぁ!?なんか、注入しとンのやろッ!?」

「聖子チャン、歌おっかな」

「あっ!?皮膚かぁ!?漂白、しとンのかぁ!?薬剤、使うて!?」

タッチパネルの操作を続ける兎さん。

「あ~~~!答えられん、っちゅーことはぁ♪
やっぱ、整───………」

ぽんっ、と、拳を叩いた狼さんの、

「あだーーーーーーー!!??」

眉間を、タッチパネルのペンで、兎さんが刺しました。

「ンなわけ、ないでしょ!
オンナの乳が、ニセモンなくらいで、
いつまでもバカみたいに騒がないでッ!」

「あーーー!!?
お前、えーぶい嬢のこと、馬鹿にしとンのか!?」

「えーぶい嬢のこと、馬鹿にしてンじゃないわよッ!
アンタをバカだって、言ってンのぉ」

兎さんは、呆れた声で言いました。

「目だの鼻だの口だの、肌を漂白したのだの」

言いながら、タッチパネルの操作を続ける兎さん。

「ほんっと、女心が、なんっも、わかんないんだから」

兎さんは、タッチパネル操作を続けながら、言いました。

「ちょっとは、『美人だよ』とか『綺麗だよ』とか、
『控えめに言って、世界一、かわいいよ』とか言って、
気持ちよくしてやろうとか、出来ないわけェ?」


「イカしてやったやん」


ぴたり、と、タッチペンの操作を止める、兎さん。


(イカして───やった───やん?)

(やば)


が、後には引けない狼さん。


「まあ、狼よか、性欲の強い、兎のお前の、
ココロのGスポットは、はずしても、
カラダのGスポットは、はずさんからな。
よかったな、満足できて。あーはははは!」

自分の首を絞める、狼さん。

「ぐえーーーーー!!??」

の、首を、兎さんが絞めます。

ぴょん、と、回転ベッドの上から、
兎さんは、跳ね降りました。

「あ!?どこ、行くねんッ!?フリータイムやで!?
歌、歌わんのかい!?歌うんやろ!?聖子チャン!
どこ行くねんッ!?」


「お風呂よ」

「じゃ、オレも」


兎さんは、枕元にあったティッシュ箱を、
狼さんの、ど頭めがけて、投げつけました。
狼さんは、それを、ひょい、と、よけました。


「美人にはねぇ、ヒミツがあるの。
入ってこないで。ついてこないで。のぞかないで」


ひとり、ガラスの扉の向こうに、行ってしまった兎さん。
ひとり、回転ベッドの上に、取り残されてしまった狼さん。


(なんやねん!?褒めたったのにっ!?)

(作りモンみたいー、ゆうて、褒めたったのに、
なんで、怒ンねん!?
それくらい、美人ー、ゆう意味やんッ!?
どこにそんな、怒る理由、あんねんッ!?)

(なんで、怒ンねん!?
どこがそんな、地雷やねん!?
どこにそんな、地雷、あんねん!?
Lv999のマインスイーパーかッ!?)

(褒めたったのに、なんで、怒ンねん)

ひとり、回転ベッドの上で、
尾っぽを、シュン、とさせる狼さん。

(……まぁ、ええわ!ソッチが、その気なら、
残りの時間、えーぶい 見ながら、ひとりでシたるわ!
あと、残り時間、40分、ぐらいかぁ?
あと、残り時間、10時間20分やな。余裕やな)

(もう、いつも、ひとりでスルときみたく、
アイツのこと考えて、シたれへん!
アイツ以外のこと考えて、シたるからなっ)

(兎以外の生きモンも、なんか、おるやろ。
兎以外の、生きモンなんか、おったかぁ?
……まあ、ええわ!猫でも、犬でも、山羊でも。
ウサギの耳のカチューシャさせば)

つけっぱなしの、えーぶい嬢の声も、聞こえません。


「ねーえ」

兎さんの声が聞こえました。

(どーせ、水、持ってこいやろ)

「ねーえってばぁ」

(あ、ビールか?)

「ねーえ」

(両方持っていけば、文句ないやろ)

「はいはい」

と、返事をした狼さん。

「のぞくで」

水とビールを手に、ガラスの扉を開けました。


「やっぱ、一緒に入ろ。つまんないから」


虹色のお風呂に肩までつかり、
モコモコの泡に包まれて、
鼻の頭に、泡を乗せて、
おどけた顔で、兎さんが言いました。


狼さんは、

(控えめにゆうて、宇宙一、かわいいな)

と、優しい気持ちになりました。


兎さんと狼さんは、
虹色のお風呂で二回戦をしました。

その後、虹色の泡風呂から上がって、
八回戦しましたとさ。

めでたしめでたし。


☆HOTELエーゲ海遊戯☆2 完
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