【LOVE】☆HOTELエーゲ海遊戯☆

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むかしむかし、あるところに、
とても可愛らしい、
左目の下に泣きボクロのある、タレ目がちな兎さんと、
ちょっとデリカシーのないところが たまにキズ の、
三白眼の狼さんが、いました。

兎さんと狼さんは、気の合う仲らしく、
ふたりはとても仲良しでした。

「あー、腹、減ったわー。ウサギでも、皮剥いで、塩振って、焼いて、食うかー」

「なんでよッ」

狼さんは、兎さんに殴られました。


「あたし、天ぷら、食べたーい」

兎さんが、言いました。

「おー、ええなあ、天ぷら」

狼さんが、言いました。

「駅前の、チェーンの天ぷら屋の、天丼でええやん。
あそこ、旨いやん。早いし。

ちゃっちゃと食って、ホテル、行こーや」

狼さんは兎さんに、また殴られました。


「カウンターの天ぷらがいーのっ。車海老の天ぷら食べたいのっ」

「どーせ、ご飯も食うやん。天丼で、えーやん。大エビ入りの天丼、頼んでえーで。エンリョせんで」


狼さんの言うことを無視して、
兎さんが、ぴょんぴょん、歩いてゆくと、
お目当ての、カウンター席で頂く天ぷら屋さんは、
営業時間前でした。

「イヤーーーーーーーーーー」

がっかり している兎さんを見て、狼さんは、

「なんか、他に、食べたいモン、ないんか?」

「もー、天ぷらのお腹だったのにぃー。
もー、エビ、お塩で、食べたかったぁー。
もー、キス、天つゆで、食べたかったぁー。
もー、タラ、もみじおろし で、食べたかったぁー。
天むす、食べたかったぁー、もー」

「しゃーないやろッ!
もーもー、言うなッ!お前は牛かッ!」

と、優しくなだめました。


「じゃ、とんかつ にする。
西麻布の、豚組の、ロースかつ にする」

と、兎さんは言いました。


「じゃ、カツ丼でえーな。
ちゃっちゃと食えるし。駅前にあったなあ」

「あんた!なんでスグ、ご飯の上に おかず、乗っけたがるのよッ!?」

「ちゃっちゃと食えるやんッ!?」

「じゃあ、あんただけ、ちゃっちゃと食って、
どっかそのへんで、時間つぶしてなさいよっ!

あたしは、ゆっくり落ち着いて、
お店の雰囲気も楽しみながら、
優雅に ごはん を、お酒も嗜みながら、食べたいのッ!!」

「ラブホで、メシ食おうやー」

兎さんは、狼さんを殴りました。

しかし、西麻布の豚組は、月曜日、定休日でした。

「イヤーーーーーーーーーー」

がっかりする兎さん。

「あ」

そこで、目に止まった、お箸で食べるパスタ屋さん。


「ま、いっか、パスタで。
もー、お腹もすいたし、足も疲れたしぃ。
ここにしましょ」

「おー、そうしょー。
ご飯の上、乗せたら、とっとと食えるしな」

「そんな、食べ物、ないわよっ」

兎さんと狼さんは、パスタ屋さんに入りました。

「あたし、シーフードパスタ♡
あ、待って。これも、美味しそう。
かぶら と豚肉の和風パスタ。冬季限定だって。
でも、シーフードのお口だしな~。
え~、迷うな~、ど~しよぉ~」

「じゃ、オレ、その、かぶら のなんちゃら~ゆうヤツにするから、両方頼んで、お前、好きな方、食えばえーやん」

狼さんが、優しく言いました。

「ちゃっちゃと選んで、ちゃっちゃと注文して、
ちゃっちゃと食って、はよ、ラブホ、行こーや。
ご休憩やなくて、ご宿泊になってまうで」

「かぶら って、なにかしら?」

「かぶら は かぶら やろ」

兎さんは、今の狼さんの言い方に、イラッ、と、しました。

「なんか、イラッとするわね、今の言い方」

「なんでやねん」

「かぶら って、かぶ のこと?」

「かぶら は あれや、かぶら や」

「だからッ、かぶら がなにか、聞ーてンのッ!かぶ とは、違うのぉ!?」

都内生まれ、都会育ちの兎さんは、狼さんに聞きました。

「だからッ、かぶら は、かぶら やッ!かぶ やッ」

関西生まれ関西育ちの狼さんは、答えました。

「ご注文は、お決まりでしょうか?」


羊の店員さんが、注文を聞きにやってきました。

「……シーフードパスタ、ひとつ とぉ、
かぶら と豚肉の和風パスタ、ひとつ、頼むわぁ」

「お客さん、かぶ じゃなくて、かぶら です(怒)」

「いま、そーゆうたわ」

なんとなーく、変な感じになった、兎さんと狼さん。

そんな空気を変えるかのように、
美味しそうな香りと湯気を立てて運ばれてきた、
シーフードパスタと、かぶら と豚肉の和風パスタ。

「食うか?かぶ」

「かぶら ね」

狼さんが、お箸でつまんだ、かぶら を、
ぱくり、と、頬張った、兎さん。

「おいし~い♡ 甘くて、みずみずくて、食感がよくて♡
あたし、かぶら 好き~♡」

そう言って、ご機嫌そうに、小さなお口を、もぐもぐ、させる兎さんを見て、狼さんは、

「交換するか?」

「いい、これで。シーフードで」

「どないやねん」

(まあ、かぶ でも、かぶら でも、かぶな でも、かぶらな でも、スズナでも、なんでもえーわ。エッチ前に、機嫌、悪ぅなられるよりは)

と、優しい気持ちになりました。


兎さんは、シーフードパスタを、残さず食べ、
ごちそうさま、を、しました。
狼さんは、かぶら と豚肉の和風パスタを、残さず食べ、
ごっそさん、を、しました。

それから、狼さんと兎さんは、
『HOTEL エーゲ海』(ご休憩3時間 / 6900円)に、
入って行きましたとさ。

めでたしめでたし。


☆HOTELエーゲ海遊戯☆ 完
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